第12話.日常

 朝食を摂り、図書室の掃除をし、夕食を摂って睡眠。

 という日々を10日間繰り返した。


 お風呂は五日に一回と決めた。

 毎日入れよ! とは俺も思うが、どうしてもあの冷たい水を思い出すと……

 おまけに泥水でもあるし。

 

 お風呂なんて五日に一回で十分だよ。

 現実逃避では全くないぞ。


 

 俺は図書室前に辿り着いた。

 リリースが床ですやすやと睡眠している。


「ムニャムニャ、キスしようよ」


 好きな人とキスをする夢を見ているらしい。

 よく、眠り心地の悪い場所で、最高の夢を見られるな。


「そ、それは……ダメ!」

 リリースが飛び上がった。


「おはよう」

「あ、おはよう。私よりも先に起きるなんてすごいね」

 リリースは眠そうな目をこすった。


「昨日は早く眠れたから」


 早く眠れたというよりかは、疲れでいつの間にかベッドにいた、の方が正確だろう。


「確かに早かったね。ということは夕食は食べてないかな」

「そうだね」

「なら、今日は豪華にしようか。私も夕食食べ忘れたし」


 豪華か……ピーマン二個とにんじん二個かな。


――――


 朝食を食べたので、図書室前に戻ってきた。

 朝食は予想通りだった。


「あと少しで終わりだね」


 図書室前は初日と同じ景色が広がっている。

 これ、本当に無限にあるんじゃないの?


「これ、進んでいるのかな……」

「進んでいるよ。後、この一山を無くせば、掃除終了だから」

「なんで分かるの?」

「窓から確認したから」


 図書室の前からだと、全く変化がないのだが。


「ここから見たらずっと山なんだけど」

「私が毎日、図書室の前に本を押してるからかな」

「押す?」

「窓側から扉側に本の山を押すんだよ」

「リリースの力で?」

「うん」


 やはり怪力だな。

 いや、カイ○キーだったか。


「なら、今日で掃除はおしまいかな?」

「多分」


 つ、ついに終了を告げるのか……

 苦しい生活から脱せられるぜ!


 この図書室掃除で、俺は掃除が嫌いになった。

 出てくるものは本だけ。

 下着とかパンツとかパンティーは現れない。


 こんな掃除は楽しくない。

 俺は、パンツが現れる掃除が好きなんだ。


 図書室ならパンツが現れるわけがない?

 いや、図書室で脱ぎ捨てる可能性だって十分にある。

 第一、リリースは一日だけ、図書室の中で睡眠をした日がある。

 その日にパンツを脱ぎ捨てた可能性がある。


 今日、パンツが現れたら、再び掃除に好意を抱きます。なので現れてください。


――――


「パンツが無い……」

「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 パンツは発見されなかった。

 ということで、掃除のことは嫌いになった。

 一生行わないとはいってないからな。


「そういえば、本はどこに運んでいるの?」

「空き部屋に運んでいるよ」


 空き部屋……って、空き部屋があったのか。


「なんで空き部屋に泊まらせなかったんだ?」

「空き部屋の存在を忘れていたから」


 これがパパの部屋ではなくて廊下で寝ている状況だったら、怒っていただろう。


「もう夕方だし、夕食にしよっか」

「分かった」

「今日の夕食は豪華だからね」


 豪華か……ピーマン二個とにんじん二個かな。


――――


 予想通り、ピーマン二個とにんじん二個だった。

 ……予想を裏切ってくれよ。

 豪華の最低ラインが、ピーマン二個とにんじん二個なんだよ。

 もうカエル肉でもワニ肉でもいいから、肉を出してくれ。


「なら食べよっか」 

「うん」


 俺はピーマンを一口かぶりついた。

 ……美味しいよ。でも、飽きたよ。


「ピーマンとにんじん以外も食べたいな」

「ピーマンとにんじんしか育ててないから無理」


 無理か……頭の中で牛丼をかぶりつくしかないのか。

 いや、ワニ肉を食す姿を想像しよう。


「あ、スイカも育ててたね」


 この世界には、ピーマンとにんじんとスイカしかないのか……


――――


 今日は五日に一回のお風呂の日。

 お風呂の日は最高! 嬉しすぎて仕方がない!

 ……入りたくないよ。


 俺は衣服を脱ごうとしたら、衣服を置く場所にパンツが置かれていた。

 全身白色のパンツだ。

 無難だが、この色が一番良い。

 これはリリースのパンツだよな?

 ……絶対にそうだ。リリースのパンツだ。

 ということで、自分の部屋に持ち帰ろう。


 お風呂に入ってからでよいか。



 ふぅ、今日のお風呂は最高だったぜ!

 リリースのパンツがあるだけで気分が高まる。


 ということで、白色パンツを大事に持っていこう。



 俺は階段を登ろうとしたら、リリースと鉢合わせた。


「お風呂入ったの?」

「うん」

「なら、白色パンツがあることに気づいたかな」


 き、気づいた?

 もしや、あしらかじめ用意をしていたのか……


「あ、そ、そうだね」

「そのパンツ履いた?」


 さすがに履いてはないぞ。


「履いてないよ」

「なら、次お風呂に来たときに履いてね」

「え?」


 リリースのパンツを履いていいのですか?

 本人公認ですか?

 ……やったぜ!


「空き部屋を漁っていたら、パパのパンツが見つかったんだよね。だから、サトルにあげようと思って」

「パパの?」

「そうだよ。他の衣服も見つかったらあげるよ」

「あ、ありがとう」


 この白色のパンツは、リリースのパパのやつだったのか……

 リリースのパンツが良かったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る