第11話.掃除

 朝食を食べ終わったので、昨日の掃除を再開する。


「なんか、昨日より状況酷くない?」

「う〜ん、気のせいだろう」


 酷いと言われたらやる気がなくなるぞ。

 こういうときは、

「少し綺麗になった気がする!」

 と言うのが正しい。


「そういえば、昨日搔きに掻いた本はどこに置いたの?」

「窓から図書室へ運んだよ」


 窓から図書室……って、昨日掃除した意味がなくなるぞ。

 わざわざ、雪崩になった図書室から本を移動させたのに、再び図書室に放り込むんだ。


 ……そういえば、図書室の窓は開くのだよな。

 つまり、窓側は雪崩状態になっていない。

 その雪崩になっていない場所に、本を整理整頓したということか。

 それなら、掃除をした意味があるか。


「図書室に本をどうやって入れたの?」

「窓から放り投げて」


 放り投げ……って、それじゃ意味ないよ。

 なぜ丁寧に運ばないんだよ。

 それじゃ掃除した意味がないぞ。


「放り投げたって嘘だよね?」

「本当だよ」


 昨日の一日が無駄じゃないか!

 なんで、なんでそんなことするんだよ……

 もしや、異世界パパの遺伝子を受け継いでいるのか?

 転生者なのに?


「リリースも掃除が苦手なの?」

「転生前は数週間に一回、友達に私の部屋を掃除してもらってたかな」


 元々から掃除が苦手なのかよ……


「でも、パパよりかはマシだと思うよ」

「図書室に放り投げる時点で同程度だよ」


 とりあえず、俺だけで掃除をしよう。


――――


 俺は本を掻きに掻いた。が、まだ雪崩は終わらない。

 正直、飽きてきた。

 飽きたならこっそりと本を読めば、と俺も思った。が、俺に合うような本が見当たらなかった。

 

 掻いても掻いても現れる本は、100人とハーレム形成をする本。

 俺はハーレムが好みではない。

 

 俺の好みは純愛だ。

 純愛こそ正義! という考え方をしている。

 なので、残念ながら俺が読む本は無いそうだ。

 

 ハーレムラブの方は大歓迎です。ぜひ、異世界に来たら、草原のど真ん中にある豪邸に来てください。


 宣伝をすることで、気持ちを切り替えることができた。


 ……なんで異世界に、現代で流行っている本があるんだ?

 転生者が広めたのかな。


――――


 リリースは順調に掃除をしている。


 最初は、掃除は俺だけでよい、と思った。が、よく考えると、これから生き抜くためには整理整頓が必要ではないか思った。

 なので、リリースにも手伝ってもらっている。

 ……いや、俺が手伝っている側だな。

 まぁ、掃除は好きだしどちらでもいいや。


 俺が掃除を好きになったのは桜のおかげだろう。


 俺が桜の家に初めて入ったのは、小学三年生のときだった。

 桜に好意を抱いてからすぐだったはず。


 家に入ってからすぐ、桜は自分の部屋を紹介しようとした。

 俺は、桜のパンツが覗ける、という下心満載で桜の部屋に入ろうとした。

 小三の頃からパンツが好きだったんだな。


 桜の部屋の扉を開くと……酷い光景が広がっていた。

 そこら中に漫画やらゲームやら勉強道具やらが散らばっていた。

 当時、掃除好きじゃなかった俺も酷いと感じるほどだった。


 俺は、

「掃除しない?」

 と言った。

 桜はそれに賛成し、掃除が始まった。


 掃除をしていく中で、様々なことが知れた。


 まず、散らばっていた漫画の全てが異世界転生系だった。

 本当にネットでプリ○ュアを見ようとしたら、コミュ障が異世界転生する深夜アニメが流れていたらしい。

 じゃないと、小三で異世界転生漫画は読まないだろう。


 子供向け異世界転生漫画もある。が、表紙は全て冴えない主人公らしき男性の周りに、美人女性が何人もいる形だった。

 表紙の時点で子供向け異世界転生漫画ではない。

 なので、幼児の頃から周りがプリ○ュアを見ている中、一人だけ深夜アニメを見ていたらしい。


 次に、掃除の終盤に差し掛かると桜のパンツが確認できた。

 パンツは桃色で、サクラの絵柄がついたやつだった。

 俺はパンツを見つけた瞬間、俺のズボンの中に隠した。

 そして、自分の家に持ち帰り、ベッドの下に隠した。

 現在は俺の部屋に堂々と飾られている。親が俺の部屋に突撃していなければ……

 突撃していないことを祈る。


 最後は、そこら中に散らばっていた五台のゲーム機が全て壊れていた。

 それを桜が親に報告しに行くと、桜は超怒鳴られていた。

 

 ゲーム機の五台は、桜のだけではなかったらしい。

 桜は四人家族で、桜用、母用、父用、弟用、予備用の五台を所持していたらしい。

 なぜ、その五台が桜の部屋に集結していたのかは知らない。


 そんな感じで一回目の掃除は終了した。

 それから数週間に一回、桜の部屋を掃除する日々が始まった。

 俺はそんな日々を送るうちに掃除が好きになった。


 桜、パンツ提供ありがとう。


――――


 今日の掃除が終了したので、夕食を食べた。

 そして、眠るためにパパの部屋に行くと、リリースがいた。


「何をしてるの?」

「ベッドの位置を変えてるんだ」


 ベッドの位置が右端から左端へと変化していた。


「なんで変えてるの?」

「な、なんとなくだよ」


 なんとなくか……

 まぁ、右端でも左端でも変わらないし、いいか。

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