第10話.朝食

 目を覚ますと、少しの光を感じた。

 まだ朝早い時間のようだ。

 早起きしたようだ。

 まぁ、外が暗くなったときに眠ったため、当然か。



 俺はパパの部屋から出て階段を降りようと思ったら、リリースと鉢合わせた。


「おはよう」

 リリースは眠そうな目をこすった。

 

「おはよう」

 俺は挨拶を返した。


 朝の挨拶も済ましたので、階段を降りようとした。

 ……そういえば、一階の部屋はお風呂と図書室しか知らないな。


「一階ってお風呂と図書室の他に何があるの?」

「そういえば、紹介してなかったね」

 リリースは引き返し、一階へ降りていった。

 俺はリリースについて行った。



 階段の隣の扉を開けた。

 廊下の正面から見たら、中央の左側の扉か。


「ここはダイニングかな?」

「そうだよ」


 部屋には木製のテーブルと椅子があった。

 椅子は六脚ある。

 その奥にはキッチンが見える。

 キッチンとはいっても、冷蔵庫や洗い場はない。


「冷蔵庫は無いの?」

「異世界にそんな便利道具は無いよ」

「洗い場は?」

「水道が通ってないからもちろんないよ」

「皿を洗ったりはどうしてるの?」

「池から汲んだ水が外にあるから、それを使って洗ってるよ」


 やはり、不便な家ですね……


「朝食作るから、椅子に座って待ってて」

「分かった」

 俺は椅子に座った。


――――


「できたよ」

 リリースは両手に木製の皿を持って、テーブルに置いた。


 一つはピーマンを切り刻んだもの。

 もう一つはニンジンを切り刻んだもの。


「煮たり焼いたりしないの?」

「ガスコンロがないもん」

「ガスコンロが無くても、木があれば火は熾せるよ」

「ここ草原だから、木が無いよ」


 そういえば果てしなく草原が広がっていたな……

 いや、待てよ。目の前に木があるじゃないか。

 このテーブルを燃やせば火が熾せる……って、それはダメか。


「ピーマンとニンジンが朝食って物足りなくない?」

「近くの農地で育てたやつしかないから……」


 近くの農地か……

 農地なんてあったか?


「農地ってどこにあるの?」

「豪邸の裏側にあるよ」


 裏側か。

 裏側なら農地があるなんて気づけないな。


「牧場は無いの?」

「無いよ」

「異世界に肉って無いのかな……」

「町に行けばあるよ」


 肉を食すために町に行きたい……

 誰かタケコ○ター持ってないかな?


「ちなみに、ワニ肉とカエル肉らしいよ」


 あ、やっぱり町に行かなくていいや。

 ……誰か牛肉を食わせてくれ!


「今は野菜しかないから、これで許して」


 まぁ、無いものをねだっても意味ないからな。

 仕方ない。今日はこれで満足にしよう。


「異世界に牛肉って無いの?」

「あるにはあるらしいけど、貴族が食べるものだね」


 貴族か。

 俺には遠い話だな。


 異世界にいる限り、牛肉は我慢しないといけないのか……

 転生する前に牛丼を食べたかったな。

 吉○家か、す○家か、○屋か……全種類食べれば良い話か。


「とりあえず、食べよっか」

「うん」

 俺はピーマンを一口食べた。


 ……美味しい。


 ニンジンも一口食べた。


 ……美味しい。


 案外、肉が無くても耐えれそう。と思ったが、脳裏に牛丼が焼き付いてくる。

 やめろ。想像するならワニ肉にしてくれ。

 ……この調子でなんとかやっていこう。



――――


 無事にピーマンとニンジンを食べ終えた。

 正直、今まで食べてきたピーマンとニンジンの中で、五番目くらいに美味かった。

 

 あ、そういえば聞かないといけないことがあったな。


「昨日、荒い息が聞こえたけど

「聞こえてたの!」

 リリースが勢いよく椅子から立ち上がり、テーブルを勢いよく叩いた。

 テーブルが真っ二つになり、破壊された。


「あ……」


 なぜ焦ったのだろう。

 熱のときなら、荒い息が出るくらい普通だろう。


「どうしたの?」

「いや、聞こえてたんだなって……」

「聞こえたらダメなの?」

「いや、そんなわけではないよ」

 リリースは冷や汗をかいている。


「昨日の夜はどうしたの?」

「えっとね……ね、熱が出たんだよ」

「それで息が荒れてたんだね」

「本当は我慢したかったけどね」


 苦しいのだから、我慢する必要はないぞ。


「熱は治ったの?」

「う、うん」


 夜に発熱し、朝には治っている……

 数時間で熱は治るものなのか?


「治るの早いね」

「私、免疫力を大量に持っているのかもしれない」


 異世界で生活をしていたら、色々な部分が強くなりそうだもんな……特に腕の力。

 リリースは怪力だ。

 カイ○キーというあだ名をやりたい。


「あ、そういえば果物もあった。持ってくるね」

「分かった」



 リリースはスイカを持ってきた。

 そして、床に座った。


「椅子に座らないの?」

「テーブルが壊れたから座らない」


 テーブルと椅子はセットじゃないといけない! というタイプか。


「なら、食べよっか」

「うん」

 スイカを一口かぶりついた。


 美味い。


「ナマステだね」

「ナマステ?」

「床に座って手づかみで食べてるからさ」


 リリースはナンを食べている感覚でスイカを食べているようだ。

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