第9話.幼馴染・後編

 それから小学生に上がり、俺と桜は関係が深まった。

 そして、カレカノ関係に……ならなかったな。

 小学二年生になるまで、桜とは一切出会うことも話すこともなかった。


 俺は小学生になってからも友達を作れなかった。

 もちろん、休み時間の際はトイレに隠れていた。

 小学生のときの休み時間は40分だったので、幼稚園の頃よりも隠れるのは楽だった。

 が、そんなトイレ生活も小学生二年生のときに終止符を打たれた。

 小二の頃からトイレに隠れると、

「お前うんこか?」

 と陽キャ男子に言われるようになったため、場所を変更した。


 トイレ以外……と思い、色々な場所に隠れてみた。

 ある日はそこら辺にあるベンチで、ある日は屋上で、ある日はゴミ捨て場で……と、散策しているうちに楽園を発見した。

 それが図書室だった。

 図書室を見つけてからは、毎日のように図書室へ出向いた。

 ちなみに、先生や児童が来ても死角になり、誰にも見つからない場所で居座っていた。

 ……俺は図書室がくれんぼでもしていたのかな。


 図書室に出向き始めて二ヶ月が経ったある日、いつも通りの場所に居座ろうとしたら先客がいた。

 その先客が桜だった。

 これが桜との第二の出会いだった。


 桜は、

「もしかして、ボッチだから私と遊びたいんでしょ」

 と聞いてきた。


 俺はもちろん、ボッチという単語を知らなかったため、

「あはは、あは」

 と言った。


 俺のコミュ能力はやはり皆無だ。


 それから、桜と遊ぶ日々が始まった。

 遊ぶといっても本を読破することだが。

 どちらが先に読破できるのか、という勝負をしたな。

 負けた方が一度ジャンプをする。という、意味不明な罰ゲームだったが。


 そんな遊びを続けて早一ヶ月、俺は桜と普通に話せるようになった。

 そして桜が友達へと昇格した。

 そして、小学生三年生のときに桜に好意を抱いた。

 それからは、桜とラブラブ、チュチュチュ、という関係に……ならず、小学校卒業を迎えた。

 

 小学生の間、桜は俺に好意を抱かなかった。が、俺は

抱いてもらうために努力をした。

 俺は桜に好意を抱き始めたときから、股間蹴りを始めた。

 桜は可愛いから、俺以外に桜を狙うやつがいる! だから、そいつらから桜を奪われてはならない! という思いで股間蹴りを始めた。

 意味不明だな。が、小学生のときだから仕方がない。


 股間蹴りの練習台は父だった。 

 俺は父に、

「ねぇこれ見て〜」

 と絵を描いた紙を見せながら言った。

 父は、

「分かった〜」

 と言って、俺の場所に来る。

 そして、父が紙を見て油断をしている隙に、股間をアタック。

 父はすぐさま股間を両手で押さえる。が、俺はその手をどかせて、もう一度アタック。

 いつの間にか股間ではなく、エクスカリバーに狙いを変更。

 父はもうやめてくれと言う。が、俺は父のエクスカリバーがKOするまで足版百裂拳をかました。


 エクスカリバーがKOしてからの一時間ほどは、父は口から泡を吹いていたな。

 ……本当に何をしていたのだろう。

 でも、小学生のときだから仕方ないよね。


 最近も、

「こいつの股間蹴ってやりたい」

 と思うことはあるが、心の中で留めているため許される。


 小学生のときは現実で実行していたためダメだった。


 そんな意味不明なことを裏でやりながらも、無事、小学生を終了させた。


 それから中学生になると、桜は俺のことを異性として見るようになり、カレカノ関係に……もちろんならなかった。

 中学生に入ってからも相変わらず友達関係だった。


 しかし、桜に二つ変化はあった。 

 一つ目は、ボブヘアーからロングヘアーに変化したことだ。

 元々可愛さが爆発していたが、さらに爆発した。 


 二つ目は、お嬢様のようになった。

 笑う際は、

「うふふ」

 と笑い、喋る際は、

「そうなんですね。うふふ」

 と言い、驚いた際は、

「すごい驚きました。うふふ」

 と言うようになった。


 今までの桜とは打って変わったため驚いた。が、そんな桜も可愛かったので、スカートの中身を覗こうとした。

 

 それから二年経ち、中学三年生になった。

 中学生三年生の始業式の日……は思い出さない。


 桜の人生を振り返った。

 俺の人生を振り返ったような気がするが、気のせいだ。


 桜の人生を振り返ったことで、一つ学んだことがあった。

 俺は黒歴史をたくさん生んでいた。


 肝心の桜の夢は分からなかった。

 桜の夢を探し出すことができなかったのは悔しいが、今日は寝よう。

 桜の夢はいつか探し出せるはずだ。

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