第4話 その一太刀は風を切り裂く

前回のあらすじーー

村に入った途端思わぬできごとに遭遇してしまう二人

悪者と思われる男に立ち向かう咲希


どうなってしまうのか・・・

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次の瞬間ーーーー


「カキン…」


なんと凛花は持っている剣で男の大剣を弾いた。


予想もつかない出来事に皆驚いた。


「そんな太刀筋じゃ私でも簡単に捌けちゃうわ?」


そう凛花は幼いころから殺陣の稽古で長く剣を振ってきたのだ。

もちろん本物の刀なども持ったことがあり

摸擬刀で何千、何万と刀を振って様々な状況を経験していたのである。

そんな凛花からしたらなんの捻りもない力任せの剣なんて通用しなかった。


「わたしー悪い事って良くないと思うのよねー

 今盗ったものを全て置いて逃げるなら見逃してあげるわよ?」

剣を構えて男に向かって言い放った。


凛花は何かの役になりっている。


「なんだこのガキ…俺様の大剣をあんな細い腕で

 いとも簡単に弾きやがった…」

予想しない出来事に男はビビって後ずさりした。


「それで、どうするの?大人しく逃げる?それとも私にまだ歯向かう気?」

そういって男を追い詰める。


完全に別人のような凛花をただ咲希は遠くから見守る事しかできなかった。


「たまたままぐれで俺様の剣を弾いただけでいい気になりあがって!

 大人の恐ろしさを教えてやるよ!」

急に男は凛花から距離をとり、大剣を構えた。


「ガキがぁ!これでしまいだぁ!!ブレイブバンカー!!」

男は大剣を横に大きく振るとこちらに斬撃の様なものが飛んできた。



「りんかちゃん!危ない!」

そう叫ぶ咲希に凛花はただ後ろを向いて少しにこりと笑った。


「やっぱりファンタジー、何でもありですわね

 ではこちらも…」

すると凛花の持っている剣が青く光りだした。


風切かざきり」

そう呟いて剣を上段に構え、目にも止まらぬ速度で振りかざした。


その瞬間、とてつもない風圧と目の前まで迫ってきていた斬撃を消し去った。

それはまるで空気を切り裂いたようだった。


その風圧は男のところまで届き、その衝撃で男は大剣を手放し

男は後ろに倒れこみ、そのまま気を失った。


少しすると遠くの方から、あの時の門番と同じ服装をした人と

先ほどの老人がこちらに走ってきた。


「嬢ちゃん達大丈夫かい?あの盗人はどちらに行ったかい?

 教えてくれると助かるんじゃが…」


「えっとーあの男の事かな?」

咲希は遠くの方で倒れている男を指さした。


「もう警備隊の者が来てたのかい?その者は今どこに行ったのじゃ?」

辺りを見ながらこちらに聞いてきた。


「警備隊…?とかじゃなくて、うちの友達のりんかちゃんが

 あの男を倒したんです…」

俯いたままの凜花を指した。


「まさか!そこの嬢ちゃんが一人で倒したというのかね!?」

老人は驚きながら聞いてきた。


「嬢ちゃん!大丈夫かい!?怪我はないか!?」

老人は凜花の肩を揺すった。


意識を取り戻したように凛花は顔を上げた。


「咲希ちゃん大丈夫!?あの男はどこへ行ったの!?」

慌てている凛花を皆は呆然と見ていた。


「咲希ちゃん!私怖かったよー!

 あそこに男が倒れてるけど誰かが助けてくれたの…?」


「りんかちゃん覚えてないの…?あの男はりんかちゃんが倒したんだよ…!

 物凄い剣捌きで圧倒して、しかも斬撃 ?みたいなのも簡単に

 打ち消しちゃうほどの一太刀だったよ!」


それを聞いた凛花だったがポカンとしていた。


「私あんまり覚えてないんだけど…確か落ちている剣を拾ったところまでは

 覚えてるんだけど…」

断片的にしか覚えていないようだった。


「分からない事も多いがお嬢ちゃんが武器を取り返してくれたんじゃな!

 大いに感謝するぞ!あれは明日、王都に納品するものでな…

 全て取られていたら大変な事になるところじゃったわい!」


老人は長い髭を擦りながら凛花にお礼を言った。


「いえいえ!私は悪いことが許せないと思っただけで…

 それにあんまりよく覚えていませんし…!」

感謝をされているが少し戸惑っていた。


「ところでりんかちゃん!さっきは本当にすごかったんだよ!

 どうしたらあんなことができるの!?」

先程の出来事に興味津々だった。


「うーん、どうやったんだろう…?

 でもこの感じ私の"固有スキル"が関係しているのかな…?」


「きっとそうだよ!りんかちゃんのスキルの効果だよ!」


「そうだといいけど…」

あまり記憶に無く、少し不安であった。


「ところで嬢ちゃん達!武器はもっているかい?

 変わった服装で見たところ武器は持ってなさそうじゃが…

 よかったらお礼に武器をそれぞれ一本作らせてくれやしないか?

 ワシに出来る礼はこれぐらいでのぉ…」

老人は二人に提案した。


「咲希ちゃんどうする…?私たちの武器を作ってもらえるらしいけど…」

凛花は咲希に耳打ちした。


「貰えるものは貰おうよ!私たちまだまともな武器もないし!

 これから魔物を倒すなら武器も必要になるはずだよ!」

提案にノリノリな咲希であった。


「咲希ちゃんがそういうなら…ではお言葉に甘えさていただきます!」

老人に深々とお辞儀をした。


「頭を上げてくれお嬢ちゃん!

 感謝の気持ちで作るんじゃからむしろ受け入れてくれてありがたい!」

老人はにこりと笑った。


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