J: 真・ラストバトル×2

「なーんて焦る必要はないんですけど。なんたって無力化した真城つばささんではないですか」

「…………」


 マリアロスの体をすり抜けて眼から手裏剣が落ちる。


「私の体はほぼエーテルなものでして……デコイ作りましょうかね、あなたの世界はこちらか」


――かつていたとされる妖怪の軍勢が現れる。


「それとも、こちらの方が好みかな」


――魔王が現れる。


 あの日あれだけ苦労して倒した魔王が。


「無事にあの煩わしい魔法陣がなくなって。私が封印されることもなくなった訳だ。お前の時間停止もこう。

今となってはエーテルをさらに凝縮すれば無効化できる」

「時間を稼ぐ」

「何を待っている? おーやぁ、あの鏡がいないな。呼びにいったか。っくっくっく。来るわけないだろう。あいつらが。その為に地球に帰したんだからな」


 マリアロスが高笑いをする。


「おまえらはこれでしまい――」


 目の前のゴブリンとダイヤウルフが炎でなぎ払われる。

 消し炭となって散っていく。


「来てましたわー」

「はあ?」


 マリアロスが素っ頓狂な声をあげる。


「何を言って……」


 入り口には徳川巴と――伏見遊都が立っていた。

 マリアロスと遊都の視線が交差していた。


 ぽつりとマリアロスが「なぜ戻ってきた」と呟いた。



「ヒロインと、地球に帰還してハッピーエンド!」


 マリアロスの錫杖が振り回された。


「それで良かっただろうが!!!」


 ため息とともにマリアロスが続ける。


「もういい……物量で潰す」


――マハルディアが、魔王が10体その場に顕現した。


「お前、あんときステラを気絶させたよな」

「なんの……話だ」

「本当は知られたくなかったんじゃないのか」


 マリアロスは視線を遊都から離さない。


「大気中のエーテルを体内で魔力に変換し使用する魔法。魔力を使った魔法も俺の力乱数支配ランダム・オーダー……いや存在をかえるものエーテルシフターで書き換えられると言うことを。だからあの時、それに気づくきっかけになりそうだったステラを排除したんだ」


 マリアロスの前に遊都が手を構える。


「お前は俺を避けていた。だから俺を地球に帰したんだ」

「伏見遊都おおおおおお」


 魔王が視界いっぱいに生まれ、魔王が体内から光があふれ出す。世界が光に覆われる。


乱数支配ランダム・オーダー


 全てが消え。魔物の群れを変化させたトランプの紙吹雪が舞う。


 かき消えた魔物の軍勢の中にはマリアロスの姿は存在しなかった。


「……逃げたか」


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