9: 露呈~why done it~
「所在が一番わからない真城さんが一番怪しいですね」
マリアロスが微笑む。その言い草が少し気にかかった。
マリアロスのスキルの効果は運を良くする。……だが運とはそもそもなんなのだろう。仮にテキサスホールデムで優勝したとして、帰りに馬車で轢かれたならばそれは運が良かったと言えるのだろうか?
「なあ、マリアロス運って何だ」
マリアロスが両手で体を抱える。
「確率の操作か?」
マリアロスが口を歪めて笑う。
哄笑がホールに響き渡った。
「最高だっ! 最高の冗談だ!」
腹をよじってマリアロスが笑っていた。
「もーう茶番は十分だ。ここには怖いやつはいない」
苦しそうに肩で息を切ったマリアロスが話す。
「確率を操作ぁ? そんなことできるわけがないだろう? 演出だよ、演出。この世の摂理も超越できるスキルのな。楽しかっただろう。異能力テキサスホールデムは。ただのトランプにそんなことはできない。出来たのは私のエーテルを固めた特別製だったからな。感情操作系スキル。そうともさ作用すらするさ、体内に私のエーテルが侵食しているからなぁ。全ては私の手のひらの上! だが地球からの転移者だけは別だ。私の力が及ばない可能性がある。伏見遊都、真城つばさ、徳川巴、グレイソン・コート! 私はな、私は自分の世界を持つやつが嫌いなんだ。グレイソンみたいにな! そうだとも転移者も身の程をわきまえて私の世界の添え物になっていればいいんだ」
「お前がグレイソンを殺したのか……そうだな?」
みんながマリアロスを包囲して獲物を構える。
「そーうですよ。シャーロットさん。ところで読み物でいっつも不思議に思うンですよ。推理小説ってありますよね。でもあれって暴力小説ですよね。犯人を割り出す。でもそのあと犯人が逆上しても大団円になってまーるくおさまるのは、犯人を超える圧倒的暴力装置があるからこそなんじゃないかって。誰が犯人でもいいんですよ。犯人に仕立てあげる……。その力が私にはある。だから……あなたたちは三流の書物にもなれない探偵ですね。ここで消え去るだけの。どうやって、グレイソンを殺したか? こうやったのですよ。
マリアロスの錫杖の延長線上にあったレガリスの右手からウルフが生えてくる。
「許せ」
右手を根元から切断する。血しぶきとレガリスの悲鳴があがる。
レガリスの落ちた右腕がダイヤウルフとなりマリアロスの元に参じた。
マーガレットがレガリスを心配する声が響いた。
ステラが大氷山を形成するが、マリアロスの付近だけ無効化されたように何も生じない。
「正義の味方はいない。ああ。あなたたち馬鹿なんですか? そう世界は成るようにするんです。いいでしょう。遊びましょう。面白い出し物には面白い出し物で」
マリアロスの袖からゴブリンやダイヤウルフが沸いて出てくる。
あっという間に魔物の軍勢ができあがり逆に包囲された。
マリアロスが錫杖を地面に突き刺し宣告する。
「私が世界だ」
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