第4話 秋子
さっさっさ、ざっざっざ。竹箒で落ち葉を掃く人が見える。石畳みがどこまでもつづいている。秋の神社の境内で僕は青色のベンチに腰掛けている。今日も友達がいなかった。一人で歩いていると神社とかに入ってしまう。マフラーの先の別れているところを指先で捻ったり戻したりする。
寒さに震えていると友達ができた。
秋子さんだ。秋子さんは白と赤の巫女服を着ている。さっきまでは竹箒で石畳みを掃いていた。
「秋子さんこんにちは」
「こんにちは、今日はお参りに来たの?」
「いいえ、一人で街を歩いていたら少し寂しくなってそれで神社に来たんです」
「神社にくると寂しくなくなるのかな?」
「はい。なんでだろうと思ったけど見通しが良くて誰もいないから、寂しくないんです」
「街もそんなに人がいないじゃない」
「街は見通しが良くないんです。家の数だけ死角があって道があれば道角がある、その分だけ色々と人を想像できてしまうんです。道ゆく人全員と簡単に友達になれたらいいんですけどね」
「そうなんだねえ。確かに境内は見通しがいいわね。少し高い場所にあるし、木と社以外には何もないしね。」
「そうなんです。見通しのいい場所で人がいないと安心するんです」
秋子さんは一旦社務所に行くと暖かいお茶を持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。あったかいなあ。あったかいものが美味しく感じる時期になりましたね」
「そうね」
「やっぱりお参りしていきます。お茶を飲んで温まった手でお参りしたら、神さまも喜ぶかも」
「そうかもしれないわね」
僕はお茶碗をお盆に返すとお茶碗の熱がほのかに残る両手で柏手をうって、お祈りした。
秋子さんは両手を腰に当ててぐーっと背中を伸ばす。秋子さんは夕日が落ちる、水平線と重なる階段を下っていってしまった。綺麗な夕日だ。
だれもいなくなった境内を見渡して目を瞑るとお祭りの音が聞こえてくるようだった。
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