第3話 寝てる自分を見てる自分

突然の光。

 目の前が暗転する。この世界は本当に何でもありだな。そろそろ空から謎のペンダントを着けたお下げ三つ編みの女の子が舞い降りてくるぞ。


 俺は再び目を覚ました時。

 目の前にはある見覚えのある部屋が写っていた。

「なるほどね………」


 あの祠は確か運命と祈願の女神・ステラとかいう奴の依代だったことを今さらながら思い出した。ということは、今目の前に広がっている風景は俺が考えたことがなんの因果かそのお節介な女神に伝わってしまったということだろう。

「本当にお節介だな。別に、こんな光景見なくたって分かってるのに」

 これは女神の見せている幻なのか、はたまた現実なのか。どちらかは分からないが、早くあの異世界に帰れることを待つばかりだ。

「女神ステラさん?見てるのか見てないのか知らないけど、早く元の場所に返してくれる?あんな場所で気を失ってたらあんたのじっか、盗みにはいられちゃうよ」

 ……

 ……

 ……

 しばらくの沈黙。

 俺は空気の読めない沈黙は嫌いなんだぞ。返事をしろ。寂しいだろうが。


『ふふ…申し訳ございません。わたくし、願われないと人間と口を聞けないのです』

 よく通る声がしたと思うと、すぐ隣に女がいた。体躯はノアと同じぐらいなのに、何というか、クズさと若さを感じないな。こいつ。

 このタイミングで話しかけてくるのだから、こいつこそ、諸悪の根元・サテラといったところだろう。

『諸悪の根元だなんて、失礼ですね。わたくしはあなたさまが望んだことをしたまでなのですが』

「誰がこんなこと望むんだよ」

『いいえ、あなたさまは確実に、間違いなく、絶対に、この光景を見たいと望みましたわ。まあ、「家族の様子を見たい」という望みを拡大解釈したものですけどね。ふふっ』

「なに笑ってんだ。うちのパーティーメンバーの一人のほうがまだ愛嬌(あざとさ含む)があるぞ」

『そうですか、そうですか。あなたさまは「今の世界」ではそのようなお仲間に恵まれて、健康に、元気に、生き長らえることができているのですね』

「…………」

 なんと性格の悪い。やっぱり神にろくな奴はいない。前に俺があった奴含め、人間を何だと思っているんだ。蹴りでも噛ましてやろうか。

 ――ただ、なにも言えないのは、この女神の言葉が真実だからだろう。


 俺は目の前にある『俺自身の亡骸』とそれを前に『泣き崩れる両親の姿』を見てそう思ったのだった。

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