第6話 友情と裏切りって相性抜群だよね。ちょっと仲良くなった2人が裏切りあうって、少年漫画だとめっちゃもえる展開。
魔王城
「ミラ、援護頼む!」
「分かったわぁ。エリン!というかクリス、いい加減起きなさい!」
「ねむねむ…」
「クリス~~!!」
エリン達勇者パーティーはラスボスである、魔族の王・魔王と戦っていた。おぞましい見た目に怖じ気づきそうだった一行だか、懸命に戦っている。
(この魔王を討伐すれば、俺は!!)
エリンは剣を懸命に振り上げる。
一行のダメージも多いが、その分、魔王にもダメージが蓄積されているようだ。先ほどよりも動きが鈍くなっている。
(これで、止めだ!!)
エリンが剣を持ち上げ、渾身の一撃を食らわせようとしたとき。
「うおっ」
天井から見覚えのある人物が文字通り降ってきた。
「廻っ!!??」
「え、エリン?てことは魔王の玉座!?」
数分前
魔王城で大暴れしてる勇者パーティー一行に気をとられ、警備が薄くなった城の裏口から俺、ノア、オットは魔王城に侵入していた。警備は思ったより薄く、楽に侵入できた。ノアが盗賊専用能力である『お宝レーダー・量と質どちらも保証します』を使い、財宝がある部屋へまっすぐ向かった。
財宝部屋はすぐに見つかり、中にはたくさんの金銀財宝があった。
「今頃エリンたちは魔王と戦ってるんでしょうか…」
「多分な」
「……怪我してないといいなあ。おねえちゃん」
「「今、何て?」」
「なんでもないわよっ!ほら、早くお宝積めるわよ!」
ノア(おねえちゃん大好き属性)に促され、俺たちはお宝を積め始めた。お宝を漁ってると、何か、スイッチのような物を見つけた。
ここでクエスチョン。俺はこの後スイッチをどうしたでしょう。
はい、正解は「ポチッとな」
スイッチを押すと地面が抜けた。文字通り抜けた。
そのまま落下していく俺たちと財宝。
そして、現在。
「うおっ」
魔王は間抜けな声を出し、俺たちと財宝の下敷きとなった。死んではない。しかし、気絶している。
「あれ、魔王討伐しちゃった?」
動かなくなった魔王。動かなくした俺。
…………
短い沈黙。次の瞬間剣が飛んできた。
エリンの物だ。いやはや、『勇者補正・なんでも避ける。初見殺しはノーセーブプレイヤーの天敵』が発動していなければ顔面を貫いていた。
「「廻(さん)!」」
2人が駆け寄ろうとする。しかし、『勇者補正・動くなまだ変身中だ』を発動して静止させる。そう。これは俺とエリンとの戦いだ。
「エ、エリン?」
ミラが困惑した様にエリンを見ている。突然のエリンの行動に戸惑っているようだ。
「エリン、エリン!何してるの!?今、殺そうとっ…」
「ミラ…少し、黙れ」
エリンがミラに近づき、首に手刀を入れる。ミラは気絶してしまった。
「お前が邪魔さえしなければ…」
「冤罪の件、半殺し…」
俺とエリンの戦いが始まった!
『勇者補正・何か不思議な力で勝てるアレ』を発動!
エリンは倒れた!!
秒で勝ってしまった。流石は勇者。
「うぅぅ…」
まだ微かに意識があるようだ。そう。手加減してやった。思ったより抵抗されたとかではない。
「あのさ、前から気になってたんだけど。なんで俺に冤罪なんてふっかけたの?」
兼ねてからの疑問だ。エリンは一緒にパーティーをしてたとき、とにかく明るくて空気の読める陽キャ。という感じだった。だから嵌められた時、『やるなぁこいつ』と思ったのだ。
「…理由か?それはな…」
「お前のその飄々と人のプライバシーを踏み荒らすところが、だいっ嫌いだからだよっ!!」
なるほどな。納得。
「俺は少し好きになったぞ。お前の性格」
完璧な陽キャが崩れて人間味がでた。
「はあぁ?何、キモいこと…言ってんだ…くそ、が…」
心底気持ち悪い物を見る目でエリンは気絶した。
「おシゃべりは、終わッタ?」
後ろから禍々しい声がする。全身が震える。
魔王だ。
直感でそう思った。
振り返って、正解。魔王が這いつくばっている。
地を張っているのにこの迫力。威圧されそうだ。
「勇者サマ」
魔王を包んでいた禍々しさが段々と薄れていくのを感じる。もしかしたら、魔王を恐ろしいと思わせていたのはこの魔王を包む禍々しい魔力だったのかもしれない。
そして、それが剥がされようとしている。
魔王の本来の姿が…
「シスターアリス!!??」
先ほどまで魔王の姿をしていたのはまさかのシスターアリスだった。ぼろぼろだが、見覚えのある美しい顔だった。
「驚きましたか?勇者様。私、シスターアリスが魔王の正体です」
シスターアリスはいつものように言う。
「あなたが魔王を倒すと聞いたとき、悲しかったです。貴方とは…友達になれると思ったのに。あなたは言っていましたね『膨大な魔力を人間に怖がられないような姿に少し変換して、こちら側に寄せてこなかった魔族もどうなのだろうか』と。この私を包む魔力は人間が私たちに近づかない様にするための鎧なのです。近づいてきたのは、あなたたちなのです」
魔族は人間と敵対したいため、あえておぞましい姿をしていたということか。それにしても極端だな。
「でも、魔族の中には人間を襲いかかってくるヤツもいる」
「はい。ですが、人間も同じでしょう?魔族というだけで襲ってくるものもいる」
言い合っても仕方がないことのようだ。
「あのさ、1ついい?」
「なんでしょう?」
「外見の怖さなくせばいいんじゃね?現にシスターアリスはギルドのやつらに好かれてるじゃん」
シスターアリスは驚いた顔をするが、すぐに悲しそうな顔に戻った。
「無理ですよ。人間と魔族とでは違いがありすぎる。それに、あの身勝手な王族が許すとも思えない」
「王族さえ何とかすればいいんだね?魔王」
「……あなたは!」
「んじゃ、やりますか!王様追放!!」
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