第5話 旅行するときとかって、準備してる間と旅行地に着くまでが一番楽しいよね。

あれから色々な旅をした。約1週間。

 魔物の大群に遭遇し、完膚なきまでに討伐をして魔物スレイヤーの称号を迷子の神様にもらったり。ノアとオットが掴み合いの喧嘩を始め、そこに集まったギャラリー達と賭けを行い、一儲けしたり。夜の野宿で恋話をしたとき、最終的に理想の結婚相手の話になり『お前だけはない』とノアとの貶し合いが始まったり。オットが召喚したジャパニーズスシを食べたり。

 そして、何やかんやあって魔王城を間近に迎えた日の夜。決起会なるものを行っていた……

 「てわけで、決起会やるぞ」

 「いや、何でよ」

 「何、廻さんの言うことに茶々いれるんですか?ノアのモテない理由ってそういう所じゃない?」

 「何だって?このちびオットっ!!」

 掴み合いの喧嘩が始まった。恒例の流れだ。

 16歳と15歳という年が近いこともあってか、ノアとオットはよく喧嘩をする。喧嘩するほど仲がいいとはまさしくこのこと。決して、止めるのが面倒とかそんな理由じゃない。

 まあ、今日は決起会だから止めるが。

 「2人とも決起会だ。魔王城前、心構えとかを言い合う会だぞ」

 「何で今さらそんなこと…もちろん私は魔王の財宝を拝借することよ」

 ノアは自信満々に言う。しかし…

 「それはもう分かりきってることだろ。決起会何だから、もっとシリアスな、感動できる感じの話題でいこう」

 そう。決起会なのだから。

 このまま魔王城に突撃してもただの強盗で終わってしまう。どうせなら背景があった方が作品的にもいい。何より、モチベーションが上がる。

 「なるほど、流石廻さん!!シリアスですね、シリアス…あ!僕は宝を持って帰ったら出国の資金にしたいです」

 始めに言ったのはオットだった。国を出たい?とは?

 「冒険者何だからいつでも出られるじゃない、国」

 「将来、クリスと一緒に、何処か遠くの国でのんびり暮らしたいなぁって意味。そのための資金に宝を使うのもいいかも」

 なるほどなるほど。

 甘々なリア充トークですな。末長く、爆発しろ(^-^)

 「それなら、私は…」

 ノアが俯く。なんとなく、言葉を選んでいるようだった。あのデリカリーを子宮に置き忘れたことでお馴染みのノアが…!

 「私は、杖買いたい…」

 杖?杖とは魔法使いが使う杖のことだろうか。あの1本が馬鹿高いヤツ。

 「ノアって、盗賊だろ?杖なんていつ使うんだ?」

 ノアに問いかけて見るが、ノアは照れたように慌てて言葉を紡ぐ。

 「べ、別に~?インテリアとしては、いいのかなって、思った?だけだし?ほら、あの。おしゃれじゃない?」

 オットと俺は向き合う。

『これはツンデレだ(ですね)』と。

 ノアは素直に慣れないツンデレの称号と隠れシスコンの称号を手に入れた!!

 「も、もう!私はいいから!!次、廻!」

 俺の番がまわってきた。そうだな…俺は…

 「俺は一生働かずに楽して生きたいかな。あと…」

 「「あと?」」

 2人が期待した様にこちらを見ている。そんなにきらきらとした目で見られたら正直に言うしかないな。

 「裏金とかコネとか使いまくって、あのクソ王を逆追放してやる!」

 「「……」」

 そう、俺は結構根に持つタイプなのだ。

 勇者パーティーの面々に関しては、俺の協調性がなかったことも原因だろうから、主犯のエリンを半殺しにするぐらいで許してやろう。しかし、王様は別だ。俺が幾ら国に尽くしたと思っている。それをふてぶてしい態度だぁ?怪しいだぁ?処刑だぁ?笑わせるな。絶対許さないからな。覚えてろよ…

 (ノア、やっぱり廻さんは廻さんだね)

 (ホント、最初からこんないい場面までクズね…)

 おい、お二人さん。聞こえてるから。

 そんな話をして、決起会は幕を閉じた!!

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