第4話 パーティーメンバー揃いました。これ以上登場人物も増えないので、安心してください。英名って、覚えにくいもんね?
ギルド
「はあ?廻のヤツが盗賊の女とパーティーを組んだぁ?」
勇者パーティー(勇者はいないがもう存在が勇者だから勇者パーティー)一行がギルド内の酒場で他の冒険者から噂を聞いていた。
曰く、『追放された勇者が盗賊の美少女を連れて魔王を倒そうとしてる』と。そんな話を教会の美人シスターがしていた。と。勇者はどうでもいいが、盗賊の美少女は気になる。と。シスターアリスの言うことは全て正しい。と。
「ごめん、エリン。多分盗賊の女って私の義妹だわぁ。最近みょ~に、生き生きしてたもの」
魔法使いのミラが申し訳なさそうに戦士のエリンに言う。エリンは深刻な表情のままだった。
「ふあぁぁ。なんの話?というか、廻はどこ?」
僧侶のクリスが眠そうに言う。クリスはいつも寝ているため、廻が追放されたことを知らないようだった。
「クリス、廻は1ヶ月前に追放しただろう」
エリンがあきれたようにクリスに言う。エリンは深刻そうな表情に戻る。
「廻が魔王討伐を邪魔しにくる可能性も捨てきれないが…たった2人のパーティーだ。オレたち4人のパーティーには叶わないだろう」
エリンは笑っていった。その笑顔に裏があるなんて、誰も気がつかないだろう。
(ミラの義妹…ノアだったか?そいつと廻が組んだ所で大した戦力にはならないだろう。ミラの普段の話を聞く限り、ノアにはあまり戦闘能力がないようだし。戦闘は全て廻が行うだろう。それなら魔王討伐なんて夢のまた夢…)
「ねえねえ、エリン」
クリスが眠そうな声を抑えながら、思考中のエリンに声をかける。
「なんだ?」
「あのさ、オットはどこ?」
パーティーの召喚師・オットの姿がいつの間にギルドから消えていた。
「………あの、廻馬鹿っ!!」
エリンは状況を把握し、頭を抱えた!
「では、気をつけていってらっしゃい!」
シスターアリスが俺とノアを教会前で見送った。
そして、俺たちの強盗作戦が始まった!!
「まっ、待って…!廻さん!」
始まらなかった…!
なんて空気の読めないやつだ。そう思い振り返ると見覚えのある少年がいた。
名前はオット。勇者パーティーの召喚師だ。俺を異世界に召喚した張本人だ。
「え、オット?なんでいんの?」
「はぁはぁ、間に合ってよかったぁ…」
オットは息を切らせながら言う。噂を聞いて、急いでやってきたと。
噂…はよく分からないが、広めたのがシスターアリスと言うことは分かった。お転婆シスターめ。計画が魔王にばれたらヤバイじゃないか。あ、シスターには強盗の件は言ってないんだった。
「魔王を倒しに行くんでしょう?ぼ、僕も…その、連れていって、くれないかな…?」
一瞬言葉を失う。いや、オットにとって、メリットが全くないから。
「あんた、本気?私が言うのなんだけど、こいつ、新星のクズよ?今から、魔王城に強盗しにいくような頭のおかしいヤツよ?」
こいつ…堂々と人を貶しやがって…
あと、完全に言葉が跳ね返ってるからな。お前もクズだ。
「強盗?」
まあでも、オットもこれで引き下がってくれるだろう。
……あれ、今のフラグじゃね?
「何でもいいよ!!」
「「はぁ!!??」」
「勇者様…廻さんと一緒なら、どこへだって着いていくよ!」
オットって、こんなヤツだったっけ?
勇者パーティーにいたころはなんだか、いつもびくびくしていて、てっきり嫌われてるのかとばかり思っていたが…
「僕、実は廻さんに憧れてて…」
「正気かっ!?目を覚ませ少年っ!!」
秘密を打ち明け少し照れているオットをノアが全力で肩を掴み揺さぶっている。
どうしよう…この状況。オットを戦力として連れていけるのは正直、めちゃくちゃ助かる。もし仮に強盗中や旅の中、魔物と戦うとき、ノアはおそらく戦力にならないだろう。よって、俺が戦うことになる。しかし、オットがいれば、戦闘が楽になるのだ。
ならば……
「よし、じゃあ一緒に行くか。強盗」
オットは目を輝かせて喜んだ。
「改めてよろしくお願いします!召喚師のオットです!!廻さん、あと…?」
「盗賊のノア。本当に、本当に、頭大丈夫か?」
「よろしくお願いします。ノア」
ノアの表情が固まる。段々苛立ちの表情になっていく。
「おい、少年。なんで廻は『さん』なのに、私は呼び捨てだ?」
器がちいさい…なんでもいいだろ呼び名なんて。
「あれ、何か不服ですか?ノア。僕はオットって言うんですよ」
「ちびオット」
「身長あんまり変わんないじゃないですか。けちノア!」
2人が睨みあって、掴み合いの喧嘩を始めた。
これは先が思いやられる。
「おぉ。これは先が思いやられるねぇ。廻」
横から声がした。さっきまでなにも気配がなかったのだが?忍びか?ジャパニーズシノビか?
この声にも聞き覚えがあった。勇者パーティーの僧侶・クリスだ。いつも寝てるヤツ。
「クリス。これまた何の用だ?」
「ん、廻に用があったんじゃないよ。用があったのはオットの方」
クリスはオットの方に駆け寄ると、後ろから抱きついた。オットは突然のことで驚いたようだが、クリスの存在を知ると落ち着きを取り戻した。
「クリス、どうしたの?」
「廻たちと行くんだと思って、暫く会えないからオット成分を充電してる」
喧嘩中だったノアも2人の世界に入り込む隙間はなかったようで、俺の隣にやってきた。
「え、何あの2人」
「クリスとオット。勇者パーティーのメンバー。あの2人、幼馴染みらしい」
「幼馴染みの距離感じゃないわよ。家族でもあんなに近距離じゃないわよ」
「………」
未成年のうちは節度のある接し方をして欲しい。
「じゃあ、そろそろ行く。エリン達には伝えておくから」
「ありがとう。クリス、またね」
「そうそう、あと1つあったんだった。そこの、ノア…だっけ?これ、手紙。君のお姉さん…ミラから」
クリスはノアに手紙を押し付け、去っていった。
「手紙…クソお義姉様から?」
ノアは手紙の封をあけ、中身を読んだ。
そして……
「何が、『調子に乗るな、貧乳小娘』よ!年増女がっ!!」
大声を上げて、手紙を破り捨てた!!
「ノア…」
俺はその一連の流れをみて、何だか哀れな気持ちになった。オットは地面に転げ回って、大笑いしている。
というか、ミラとノアは姉妹だったのか。初知り。
パーティーにオットが加わった!!
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