第3話 可愛くて優しくて頭よくて勉強できる女なんて現実にはいないんだから、今日も2Dに引きこもる。

「勇者様へのお客様のようですね。私は失礼させて頂きましょうか…」

 シスターアリスが気を遣って教会を後にした。

 どうしてくれるこの状況。向こうの少女にかける言葉を探していたとき、少女がこちらに歩み寄ってきた。

 「私、勇者様に憧れていて…『あの件』も本当は勇者様じゃないって信じてます!だから、勇者パーティーが魔王城に勇者様抜きで行くのが許せなくて…だから、だから!」

 

 「私と一緒に、魔王を倒しに行きませんか!?」

 少女が懸命にこちらに語りかける。誰も初見では、信じこんでしまうような言葉だ。しかし、さっきの一件を見てしまったために、まるで信用ならない。

 おおかた、勇者である俺に着いていって、魔王城の財宝をパクってこようという魂胆だろう。回りくどいのも面倒だし、正直に言ってやるか。

 「俺、さっき君のスリ事件お説教会に居合わせてた男Aなんだけど」

 「は」

 「まあ、あの時は変身魔法使ってたんだけど」

 「な、に言ってるんです、か?」

 明らかに動揺している。やはりさっきの言葉には嘘が紛れているようだ。

 「と言うわけで君の本性は知ってるから、本音で話してくれる?」

 ここで、『勇者補正・腹割って語り合いましょうや』を発動!このターン中、相手は嘘がつけなくなった!

 「ほ、本当、は…」

 「勇者って偽善とプライドの塊なんだから、傷ついた所をこの美少女のノアちゃんがやさし~く慰めて、無駄にある力で魔王とかと戦ってる間にこそこそっと魔王の財宝をパクって、魔王討伐の報酬もパーティー割すれば、一攫千金じゃねっ?まじ、私天才すぎるわ~」

 まるまる嘘じゃねぇか。

 ここまでくると逆に潔いわ。

 ターン終了!相手の行動!

 「今、本音が…勝手に…!?」

 「バッチリ言ってたな。流石の俺もちょっとびっくりしたぞ」

 少女は諦めた様な顔をした。説得は無理だと察したようだ。

 「てか、あんた、なんでそんな飄々としてんのよ。一様、あんたを騙したんですけど?」

 少女は開き直って俺と会話をするようだ。

 「いや、被害は食らってないし、俺とは関係ないし、お前がどうしようと俺に止める権利はないよ」

 「………」

 少女は驚いた様にこちらを見る。

 おっと。この感じ、よく転生前にやっていたギャルゲーにあった気がする。プレイヤーになに食わぬ顔で嬉しいことを言われたヒロインがする顔だ。これはまさか…

 「あんた、私の本音無理矢理言わせたくせによくそんなこと言えるわね。デリカリーと記憶力ないの?頭いかれちゃった?」

 はい、そんなことないですね~。知ってました知ってました。

 「まあ、いいや。あ~あ、せっかくの一攫千金だったのに」

 少女が捨て台詞を吐いて、教会から立ち去ろうとする。

 「ちょっと待て」

 俺は慌てて少女を止める。まだ話は終わってない。

 「何?騙した見返りが欲しいとか?言っとくけど、金はあげないから」

 なんという図々しさ!!別に金には困ってないが。

 「俺と一緒に魔王城に強盗でもどうだ?」

 差し出された手に、少女はまたしても唖然とした。

 顔文字で表すと( ゜Д゜)←こんなかんじ。

 「俺には聖職者は向いてないからな。どっちかっていうと、野蛮な強盗の方がしっくりくる」

 いい転職機会だ。これに成功すれば、一生働かなくていいかも。

 「……本気で頭いかれてんじゃない?」

 少女は困った様に、少しニヤついて言う。

 「私、ノア。盗賊のノア」

 「俺は廻。元勇者だ」

 ノアは俺の手を取った。

 

 パーティーにノアが加わった!!

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