第2話 『あざとい』って単語聞くといつもクラスのカーストトップ男子にだけ優しかった可愛い女を思い出す。

 教会の買い出しのため、変身魔法をシスターアリスにかけてもらい、町へ出た。

 帰り道。ざわざわとうるさい町の様子がいつもとは違うことに流石の俺も気がついた。町の人に聞いてみると「勇者パーティーがついに魔王城へ攻めこむ」という。

 今となっては関係ないが、まあ、怪我なく討伐出来たらいいね。と思う。

 そんなことに考えてると前から女の子が抱きついてきた。

 女の子は16歳ぐらいだろうか。小さめだった。白い髪と白い肌。服は動きやすいラフなものだった。

 「た、助けて下さい!知らない男の人が追いかけてきて!!」

 「いや、俺に言われても。国のお優しい兵士さん、ここの通りの向かって右側にいるよ?そこに行きな?」

 俺は少女を自分から引き剥がし、買い物を遂行しようとする。

 「まままままってください!え、助けてっ!?」

 「いやいや、僕みたいなもやしがやれることは道を教えることぐらいしか…」

 少女は喰い下がらず立ち去ろうとした僕を掴む。

 「も、もやし…?なにそれ。…というか、こんな、か弱い美少女を前に立ち去ろうって、神経いかれてんの……」

 自分で言いやがった。

 「俺もう行くけど…」

 「待って待って待って!ホント、何でもするから!」

 何でもするから……か。俺が正常な男性でなかったらどうするつもりだったのだろう。まあ関係ないけど。

 「じゃあ、ばいばい」

 「待って待って待ってってば!…うっ!」

 後ろから2人の男が少女の首根っこを掴む。何だろう、猫みたいだ。

 「嬢ちゃん!スリはいかんって前も言っただろう!」

 「ほら、俺らから取った金を返せ!」

 「ちぇっ」

 少女はポケットから財布を取り出した。どうやらスリだったようだ。男たちは財布を受けとると少女を地面に下ろし、向き合って説教を始めた。

 「もう!何回目だっ!」

 「次はないって言ったよな?罰として1日俺らの店の皿洗いだ!!」

 少女があからさまにげっとした顔をする。めんどくさがっているようだ。なら、始めからスリなんてするな。

 しかし、しばらくの間怒られていた少女が表情を変えた。そして…

 「おじさん、ごめんなさい…私、もうしないから。そんなに怒んないでよ…」

 上目遣い、涙目、口元に当てた手による小顔効果、ロリ、エトセトラ……あざとポイント12000敵にクリティカルヒット!敵は致命傷を喰らった!

 「ま、まあ、次こそ本当に皿洗いだからな!」

 「そうだぞ!もう、ダメだからな…」

 「うん!!」

 無邪気な笑顔、プラス13330のあざとポイント!敵は戦意を失った!!

 「兄ちゃんも巻き込んで悪かったな」

 「これ、俺らの店のクーポン券」

 「あ、どうも」

 俺はクーポン券を手に入れた!男たちは去っていった!

 俺と少女はその場に2人にきりになった。

 何だろう、微妙に退出しにくい雰囲気だ。

 「あんた、とっとといったら?」

 少女に気を遣われ、俺もその場をあとにした。

 教会に戻ると、いつもより帰りが遅かったからかシスターアリスが心配をしていた。変身魔法を解くと、俺に水を持ってきてくれた。

 「何かあったのですか?」

 「スリ師の少女があざとかった」

 「???」

 何を言っているのか、わからないという様子だった。

 説明するのも面倒だ。早く仕事をしよう。

 そう思い、水を飲み、立ち上がったその時…

 「あ、あの!ここに勇者様がいると聞いたのですが…」

 教会の入り口にはさっきのスリ少女がいた。

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