第66話

今まで自分の容姿を気にしたことはない。



気にする余裕もなかったし、何より気にするだけの価値もなかったから。



だけど、そんな私でさえも思わず両手で顔を隠してしまうほどだった。



醜い、見苦しい、汚い。



まさにーー今の自分自身だ。







「つまらない意地を張ってないで答えろ。誰にやられた」


「‥‥つまらない?」


「ああ、そうだろ?誤魔化したところで何になる」


「そうよね。あんたに私の気持ちなんて分かるはずないわよね」




こんな、取るに足りないちっぽけなプライドなんて。



時雨になんて、到底理解出来るはずがない。







「ーー出て行って」


「‥‥あ?」


「早く出て行ってっ!」




ヒステリックに叫んだ私に、見限ったように溜息を吐いて立ち上がる。







 

「そうかよ。ならもう勝手にしろ」




うざったそうに言葉を吐き捨てた時雨が出て行った後も、暫く荒ぶる感情を抑えきれなかった。

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