第64話
◇
痛い、痛い、痛いっーー。
体中に突き刺さすような痛みが走り、蹲ってなんとかやり過ごした。
どうして体がこんなに痛むのかと思考を巡らせれば、意識を失う寸前の出来事がフラッシュバックして寒気がした。
‥‥生きてる。
死なずに、済んだんだ。
銃で撃たれそうになったあの時よりも、恐ろしいと思うのは何故だろうか。
「おい」
物思いに耽っていたせいで気がつかなかった。
「誰にやられた」
不機嫌な重々しい声。
怒りを押し殺すかのような声色に、視線を合わせることすら躊躇する。
「言え」
辺りの空気が凍り付いたかのようにぴんと張り付く。
「早く言え」
冷気を放つ時雨は、苛立ったように、急かすようにそう続けた。
それに酷くーー腹が立った。
ドロドロとした負の感情が込み上げてきて、爪が食い込むほどに強く拳を握る。
言ってやりたいことは山ほどあった。
怪我をした相手に対する最初の一言がそれなの?
もっと他に言うことがあるんじゃないの?
誰のせいでこんな目に合ったと?
それなのにどうしてそんなに苛立ってるの?
怒りたいのは私の方なのに。
「口は聞けるんだろ?なら早く答えろ。こっちは暇じゃねぇんだよ」
この男は、一体何様のつもりなのか。
どうして私が責められないといけないの?
そもそも、時雨が私に干渉しなければこんなことにはならなかったのに。
「おい、いい加減にしろよ」
私の気持ちなんてつゆ知らず、逆撫でするかのような物言いに自分の中の何かがプツンと切れた。
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