第64話




痛い、痛い、痛いっーー。



体中に突き刺さすような痛みが走り、蹲ってなんとかやり過ごした。



どうして体がこんなに痛むのかと思考を巡らせれば、意識を失う寸前の出来事がフラッシュバックして寒気がした。



‥‥生きてる。



死なずに、済んだんだ。



銃で撃たれそうになったあの時よりも、恐ろしいと思うのは何故だろうか。






「おい」




物思いに耽っていたせいで気がつかなかった。







「誰にやられた」




不機嫌な重々しい声。



怒りを押し殺すかのような声色に、視線を合わせることすら躊躇する。







「言え」




辺りの空気が凍り付いたかのようにぴんと張り付く。








「早く言え」




冷気を放つ時雨は、苛立ったように、急かすようにそう続けた。








それに酷くーー腹が立った。




ドロドロとした負の感情が込み上げてきて、爪が食い込むほどに強く拳を握る。



言ってやりたいことは山ほどあった。



怪我をした相手に対する最初の一言がそれなの?


もっと他に言うことがあるんじゃないの?



誰のせいでこんな目に合ったと?



それなのにどうしてそんなに苛立ってるの?



怒りたいのは私の方なのに。







「口は聞けるんだろ?なら早く答えろ。こっちは暇じゃねぇんだよ」




この男は、一体何様のつもりなのか。



どうして私が責められないといけないの?



そもそも、時雨が私に干渉しなければこんなことにはならなかったのに。






「おい、いい加減にしろよ」




私の気持ちなんてつゆ知らず、逆撫でするかのような物言いに自分の中の何かがプツンと切れた。

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