第63話

「私、もう行かないと」


「あれ、星宮さん午後のコマないのぉ?」


「今日は用事があって」


「ふーん。そんなんだ。てかさ、もしかしてあの超絶美形の人来てるの!?」


「え!見たい見たい!」





本当は朝から体調が悪くて、組の会合があるらしい時雨から休めと言われたのを押し切り、せめて昼までの許可を取ったのだ。



騒めく彼女達をやり過ごし、見えなくなったところで安堵のため息を吐いた。






ーーその時だった。



階段を降りる途中で、背後から人為的な力が加わったのは。



完全に不意をつかれてしまい、抵抗することも受け身を取ることもできない。



下へと急降下する体に心臓が激しく波打つ。



その最中、一瞬だけ見えた人影。









『死ねよ』




言葉を発することなく口元だけ動かし、歪んだ笑みを浮かべた。




ーー私は、死ぬのだろうか。




こんなところで、こんなことで、こんな場所で、こんなヤツの手によって。










『星宮〜、ちょっと付き合えよ』




かつて、私を苛める主犯格だった彼女。



小学校から高校まで続いたそれは、私の中の尊厳というやつを根こそぎ奪っていったんだ。



気を失う寸前、視界に入ってきた彼女の瞳は、憎悪に満ちていた。

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