第62話

「星宮さんって、変わったよね。昔は地味でダサくてガリガリで暗かったのにさ」


「そうなの?全然想像できないけど」


「でも確かに暗そ〜、全然喋んないし」


「それに前はよく倒れてなかった?ギンギンが毎度介抱してたから、一時期デキてるって噂になってたじゃん」


「そうそう、したらまさかのまさかであの〝帝王〟に気に入られるっていうね」


「羨ましい〜、生徒間じゃ一番人気のギンギンに、あの帝王に、いっつも送り迎えしてくれる銀髪の超美形の人もいるしさ〜」






ーー面倒だ。



心の底からそう思う。



言葉の裏には〝なんであんた如きが〟と蔑む意図が見受けられ、居心地の悪さで食事が喉を通らない。



こんな時こそ時雨がいてくれたらと、思ってしまうくらいだ。







「千穂なんて、入学した時からずっとアプローチしてたのに、一度も相手にしてもらえなかったっていうのにね」


「そうそう、千穂マジかわいそう〜」


「実のところどう取り合ったの?」


「それ!私も気になる!」


「やっぱ体の相性ってヤツ?星宮さん脱いだら凄そうだしさ〜」


「ちょっとエリ、その言い方は酷くない〜?」


「ええ、いいじゃん。あの帝王に好かれて散々いい思いしてるんだから」





昔の嫌な記憶が脳裏を過り、吐き気さえしてきた。



息苦しさに胸を抑えていると、幸いにも着信音が鳴った。







『小夜さん、今着きました』




無名の声を聞き、少しだけ息がしやすくなった。



まさに絶妙なタイミングだ。

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