第58話

「害しているのはお前の主人の方だろ。何故また倒れたと?」


「だからといって、それを逆撫でするような真似をしないでください。今のこの状況を若が知ったらどうなると?」


「お前が言わなければいいだけの話だろ。尤も、お前にそんな真似はできないだろうが」


「私が直ちに連れ帰れば済む話です。若は今日は登校していませんので、耳に入ることはありません」






驚きのあまり目を見開いた。



何故ただ一人の女のために、主人に逆らうような真似を?







「これ以上の会話は無意味です。あなたも、くれぐれも余計な真似はしないでください」




壊れ物を扱うように星宮を抱え上げると、ゆっくりと歩みを進める。







「あなたは優しいだけです。良くも悪くも」


「‥‥‥」


「あなたが彼女にできることは何もない。だから、必要以上に関わるべきではない」


「‥‥あいつには。一之瀬にはあると?」


「少なくとも、私はそう思っています」

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