第51話

濡れた髪を無造作に拭きながらベットに腰掛けた時雨。



毎度のことながら、上半身裸でうろうろするのはやめてほしい。



とはいってもここはこいつの部屋だし、今寝転がっているベットすらもこいつのものだ。



だから、思っても口に出したことはない。







「何見てんだよ」


「‥‥別に」




引き締まった体、整った顔、優れた頭脳、そして絶対的な権力。



そんな性格以外は優良物件な時雨を周りが放っておくはずもなく、常に女性との噂が絶えなかった。



何度か女性といるのを見かけたことがあるが、その全てが目を惹くような綺麗な人ばかり。



それなのに、どうして私みたいなのを囲っているのか謎でしかない。




そんな時雨が、どうしてあの時〝孤独〟に見えたのだろか。



傘も差さずに佇んで雨に打たれる姿は、不確かで、不透明で、虚無感に染まっているように思えたんだ。







だから、





『傘、使う?』





一番関わりたくない人種を相手に、つい声を掛けてしまった。

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