役割
第37話
ーー温かい。
体がポカポカして、どうしてだか無性に心地が良い。
「‥‥時雨?」
蠱惑的な美貌を無防備に晒す男の顔を見ながら、状況が理解できずに困惑する。
私が身動きしたことで覚醒を促されたのか、低く唸りながら体ごと引き寄せられた。
‥‥どうして私は、時雨に抱き締められるような形で寝ているのだろうか?
昨日、家に帰ってきてからの記憶がない。
長いこと夢を見ていたような気もするが、内容が全く思い出せない。
身なりは整っているから抱かれたわけでもないだろう。
なら、こうして密着しているのは何故か。
時雨が行為の時以外で触れてくることはない。
一緒の部屋にいても一定の距離はあるし、同じベットで寝ていたとしても同様だった。
だからこそ、今の状況が異常に思えてならないのだ。
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