第28話
「それが気に食わなくて星宮にちょっかいを出してんのかと思ったが杞憂だったな」
それ、絶対杞憂じゃないと思う。
時雨のことだ、全てを自分の思い通りにしないと気が済まないタチだから、唯一反抗する私を支配することで支配欲を満たしているのだろう。
誰もが己を恐れ、従い、尊敬の意を抱く。
それが当たり前だったからこそ、私のように何の関心も抱かずに反抗する態度がさぞ珍しく、同時に腹立たしかったに違いない。
だが所詮は、その支配欲も独占欲も一時の感情に過ぎない。
時が経つ、あるいは満たされてしまえば消え失せ、残るのは無関心だけ。
「‥‥噂をすればってやつだな。ほら、〝帝王〟のお出ましだぞ」
この大学に〝帝王〟だなんて時代錯誤な呼ばれ方をしているのは一人しかおらず、溜息を吐いた。
「おせぇんだよ」
案の定、不機嫌丸出しの時雨が立っていた。
「私、別に待っていてと言った覚えはないんだけど」
「あ?」
「いや、〝あ〟じゃなくて」
正論を言っているはずなのに、俺様時雨様は眉間の皺を深くしていく一方だ。
「お前もちゃんと課題を出せよ。俺は誰が相手でも贔屓しねぇぞ?」
「ンなのいちいち言われなくても分かってんだよ」
「先生にはちゃんと敬語使えろ」
「俺限定でそんなこと抜かすのは、贔屓ってやつじゃねぇのかよ」
「ったく、冗談が通じない相手だな」
流石は銀先生と言うべきか、あの時雨が口を利くなんて‥‥。
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