第27話
「それにしても肉付きよくなったなぁ、
一見失礼な言い方に聞こえるかもしれないが、これは私と先生との親しさからだった。
銀先生には随分とお世話になった。
時雨と関わる前、バイトや講義に追われてまともに寝れずに、ご飯を食べるだけの余裕もなくて廃人のようになっていた私を気遣い、よく買い過ぎたなど色んな理由を付けては、昼食を分けてをくれていた。
ゼミに親しい人がいなくて、休んだ時の連絡も個別にしてくれたりと、先生には感謝してもしたりない。
ゼミの先生だからといって、普通ならここまでしてくれないだろう。
私が大学に通ってこれたのは、間違いなく銀先生のおかげだった。
「ああ。それに、雰囲気も少し変わった気がする」
「‥‥気のせいですよ」
「そうか?前はもっとピリピリしてる感じだったけどな」
「あの時は、色々と切羽詰まっていたので」
「そうかそうか。今は違うんだな」
それは断じて認めたくないところだ。
あいつに支配されることで、私に良い影響があるなんてことは決して認められない。
「大事にされてんだな、良かったよ」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「‥‥何を、言ってるんですか?」
「一之瀬のことだよ。最初はどうなるかとヒヤヒヤしてたんだが、今の星宮を見て安心した」
大事にしてる?時雨が‥‥私を?
そんなことあるわけがないのに。
先生は勘違いしてるんだ、私たちの関係を。
「ほら、星宮が入学したばかりの頃に、一之瀬とゼミが一緒だからってプリントを渡すように頼んだことがあったろ?あの時に俺に言ったこと覚えてないか?」
「いえ、全然全く‥‥」
「『彼とは関わり合いになりたくないので他の人に頼んではもらえないでしょうか?それに、私が渡したところで彼は受け取らないと思います』って」
言ったような、言ってないような‥‥。
「あれさ、一之瀬聞いてたんだよ」
「‥‥え?」
「たまたま俺に用があって来てたんだ。まあ、星宮は全く気づいてないようだったが」
「‥‥少しも気付かなかったです」
「入れ違いになる時に、思いっきりすれ違ってたけどな」
あれほど存在感のある時雨に気付かないとか、あの時の私はどれだけ追い詰められていたんだろう。
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