第24話

「お前、分かっててやっただろ?」


「何‥っ‥を」


「挑発したことだ。あいつらがカタギじゃねぇのは一目瞭然なはずだ。それに気付かないほど馬鹿じゃないだろ」




図星を突かれて押し黙る。




怒りを含んだその鋭い眼差しから逃れたくて目を逸らそうとしたが。






「誤魔化せると思ってんのか、あぁ?」




地を這うような低い声に、醸し出す殺気を間近に浴びて、恐怖のあまり涙が溢れる。







「お前には生への執着がねぇ。〝死んでもいい〟って思考が常に頭ん中にあるんだよ。だから、〝普通〟なら身の危険を察知して避けようとするようなことを進んでやる」






〝生への執着〟




その言葉に既視感を覚えた。










「そんな‥こと‥ないっーー」


「嘘吐くな。意図的にやったんだろうが」


「死にたい‥なんて、思ってない」


「んなことは聞いてねぇんだよ」


「私はっーー」


「ごちゃごちゃウルセェんだよ。忘れたんなら思い出させてやる」


「やぁあっーー」





とうに限界を迎えた体に追い打ちをかけるように、腰を持ち上げられて最奥を突かれた。



絶頂に達すると同時に、一瞬だけ意識が鮮明になると、あの時の記憶が思い起こされる。







私はあの時、何を思っていた?




無名が自分と重なって見過ごせなくて、それでーー。



無名が侮辱されたことが許せなくて、あの女に一言言ってやらないと気が済まなかった。



体を撃ち抜かれる光景が頭を過っても、気付かないふりをした。



ーーそうだ、時雨の言う通り私には生への執着がない。



死にたいとは思っていないが、生きたいとも思ってない。



言ってしまえば、どうでもいいんだ。



私にとって、自分の命の尊さなど気に入らない女への罵倒をすることにも劣る。







「それが分かってるから尚更外に出せねぇんだよ。誰が進んで死ににいくようなやつを野放しにするか」


  



それを、時雨に見抜かれていたんだ。








「お前は俺のものなんだよ。だから、お前の命も俺のものだ。勝手に捨てることは許さない」





〝どうしてあんたにそんなことを決められないといけないの?〟とか〝一体何様なのよ〟とか、いつもなら暴言の一つでも言ってやるところだが、生憎そんな気力は残ってはいなかった。



今の私にできることといえば、与えられる快楽に鳴くことだけ。








「大学が始まるまで十分に時間がある。それまでに解放するかはお前の態度次第だ」





こうなってしまったら、大人しく懐柔されたフリをするのが賢明だと経験上学んでいる。



そうするように、いつの間にか体に教え込まされていた。

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