第22話

泣く資格なんて無いのに、涙が伝う。



痛々しい無名の姿に、胸が張り裂けそうだ。










「‥‥嬉しかったんです」




しかし、無名からかけられた言葉は想像していたものとはかけ離れていた。








「私のことで感情的になって、怒ってくれたことが」





困惑する私に、優しく微笑む無名。




‥‥この人は、こんな顔で笑う人だっただろうか。








「情けない話、あの女を前に萎縮して動けなかったんです。小夜さんの言葉で、ようやく我に返りました。だから、謝るのは私の方です」


「‥‥無名は何も悪くないじゃない」


「守るのは私の役目です。それなのに、あなたに守られた挙句、こうして怪我までさせてしまった」


「‥‥私は、無名を守れてなんかいない」


「では、お相子ということにしましょう」






私の手をとり微笑む無名。




どう考えても非があるのは私の方なのに、こうして気に病まないようにしてくれる無名は、本当は優しい人なんだと心の底から感じた。

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