第21話






無名は深手を負ったもの、幸いにも命に別状はなく、後遺症も残らないようだった。



治療が終わるとすぐに目を覚ましたけれど、血の気が引き、病的なまでに蒼白い顔や、ここに運ばれるまでに流した血の量を思うと、罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。



無名がこういうことに慣れているため、急所を避けられたのは偶然でしかない。



もし、取り返しのつかないことになっていたらーー。



そう考えるだけで恐ろしくなる。












「‥‥ごめんなさい」




病院のベットに横になる無名の手を握りしめ、地面に膝をついて深く頭を下げた。










「どうか、気に病まないでください」


「いいえ。謝って済む話ではないけれど、あなたを傷付けてしまったことを謝罪させてほしいの」


「‥‥小夜さん」


「本当に、ごめんなさいっーー」






無名は時雨の護衛や補佐をしているほどの実力者だ。



私がしゃしゃり出なければ、事はもっと穏便に済んだのだろう。



あの場で私がしたことは悪手でしかなかったのだ。

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