第20話

どこから現れたのか、一之瀬組の組員と思わしき男達が車に乗せられた無名を運び出していた。







「マリア様、相手は一之瀬組の若頭です」


「一之瀬組‥‥ですって?」




みるみるうちにその瞳を絶望に染めていく女。









「いい加減目障りだ。この女を連れて行け」


「ーーいやっ!離して!離しなさいっ!一体私を誰だと思っているの!?」





喚く女をよそに、女の護衛だった男たちは時雨に頭を下げると去っていく。









「無名を病院まで運べ」





護衛を失い、途端に威勢をなくして泣き出した女になど目もくれずに私を抱えたまま車に乗り込んだ。

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