第22話 稲守任三郎と加賀②

「えぇ、実は・・・」


加賀には、銃の弾薬や、今までの事を考えるとゴブリン程度は近接戦で倒せないと先が不安な事、オークなどの銃に対応する敵が出てきた場合、帰還用の弾薬が不足する可能性を伝える。魔法についてはまだだが。


「そうですねぇ・・・。使う得物によりますが、短剣術や槍術を扱う方は何人かいらっしゃいます。しかし基本的に自衛隊は銃火器の訓練が多いので・・・そういった伝手はありません」


「わかりました・・・。とりあえずは銃火器の申請だけしますね」


「承りました。こちらで手続きしますので、準備ができましたらご連絡しますね」


「ありがとうございます。それでは自分はそろそろ自室に戻りますね」


トレーを持ち、席を立ち、ベランダから室内に戻る。

相変わらずの視線を感じつつ、トレーを返却口に戻し、そそくさと食堂を出て自室へと戻る。


「ふう・・・」


あの視線の多さにいつか慣れるのだろうかと思いながら、明日からの事を考える。


(とりあえず近接戦闘は無しにして、水や鉱石、オークの討伐証明を取る。そして魔法の研究だな・・・)


現状使えるのは水を出す魔法だけ。

報告書を作成しつつ、魔法の詠唱文を考える。


(これでネットとか使えればな・・・誰かが作った創作作品の詠唱をそのまま使えるのだが・・・)


数十分程で報告書をかき上げ、気になっていたオークの録画映像を見てみる事にした。


「あれ?」


思わず声が出た。

映像にはオークの死体が写っているのだが、途中で大量のノイズが画面に走り、ノイズが消えるとともにオークが消えていたのだ。


そのままオークのいないエリアだけを写しだす録画映像。


「これは報告書に一応書いておくか」


録画を押してから眠りに入るまでの数分しか写っていない為、端末の不具合なのかと思った稲守は、報告書を送信してから魔法の詠唱文を書き出していく。


(さて、とりあえず水を生成する魔法はあれでいいとして、次は火だな)


火を扱えれば着火剤や、ファイヤースターター等、念のために持っている装備を減らせる。


(そういえば魔法に適正とかはあるのだろうか)


漫画やアニメ、ゲームを考えると、個人によって属性に適正が存在する作品がとても多く、あのキャラでこの魔法を使えればと何度も思ったことがある。


(とりあえずは火、風、土の魔法で考えてみるか)


そのままいくつか詠唱文を考え、いくつかメモ帳アプリに打ち込んだ後、次の日に備えベッドへと入り眠りに入る。


次の日、いつも通り朝6時頃置き、売店で買っておいた食料を齧りつつ、予定を確認する。


端末には銃火器の申請許可と訓練日程の通知が来ていた。


(お、今日の午後からでもいいのか・・・。でも魔法の検証したいしな・・・)


さらに端末のメッセ―ジには、いつでもいいので、水やイワシ、鉱石サンプルがもっと欲しいとの依頼が来ていた。


(なら先に水とイワシ、鉱石を採取して魔法の検証を今日はするか)


ダンジョンに入る申請と、銃火器の訓練日時の申請をして、売店に銃弾の補充や食料の補充をしに行く。


銃弾の追加はどうするのかを聞くのを忘れていた稲守は、加賀へと端末にメッセージを送ると、直ぐに返事が帰ってきた。


『ホテルの地下1階にて、申請が行えます。端末を持っていれば承認が降りますので、忘れないようにお願いします』


との事だ。


言われた通り、エレベーターで地下1階へと降りると、入口はいつか見たようなゲート式で、降りてすぐ左側に窓口があった。


「すみません、ここで銃弾の購入ができると聞いたのですが・・・」


「端末をこちらに」


「はい」

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