第19話 稲守任三郎とダンジョン報告二回目 そして魔法
「発射音を聞いてから・・・たしか稲守様が使用しているのは、猟銃でしたよね?弾速はどの程度だったでしょうか」
「確か秒速200m程ですね。それを撃った瞬間両腕で頭部を守ったんですよ?悩んだ挙句速射してなんとか倒しましたけど」
「そのオークの討伐部位はありますか?」
「あ、すみません、実はその後疲労で寝ちゃって・・・。起きたらもう死体が無かったんです」
「そうですか・・・」
加賀としてはオークと稲守が言う存在が気になったが、彼の事だから映像には残っているだろうと思い、これ以上の詮索はしなかった。
車に揺られて数十分後、ホテルに戻った稲守は部屋に戻って報告書を書く事にした。
「んー・・・オークの検証もっとしたかったなぁ・・・あとはダンジョンの形態を考えると継戦能力が欲しいな」
銃の場合、進むにしても戻るにしても検証するにしても弾薬という制限がある為、正直2階層目に行くのは難しいと思っていた。
「こういう時に魔法でもあればな・・・こう水よ出よ!つって手から水が出たり」
手をかざし、魔法のものまねをしてみる稲守。
『ダメダメ、そんなんじゃ魔法は使えないよ』
どこからともなく声が聞こえてくる。
「誰だ!?」
『んー、とりあえずは神様って事にしておいてよ。んでね?魔法には必ず詠唱が必要っていう事になっているんだ』
脳内に響き渡る謎の声、気がふれたのかと考えた稲守。
『大丈夫だよ。君は正常だ。いや、日本だっけ、君のいる国だと異常かもね。だって今の君は魔法が使えるのだから』
思考が読まれているのか、稲守は気になる事を頭の中で考えてみる事にした。
(神?なんの神だ?俺に話しかけた理由は?)
『質問はダメだよ。とりあえずは勝手に説明させてもらうね。まず君はあの水を飲んだ事によって魔力をつかさどる臓器が生成されたんだ。』
(臓器?身体にそんな隙間あるわけ)
『そこは気にしたら負けって奴だよ。具体的には心臓に内臓したような感じだから人間の機械じゃ何しても調べられない。それでね、その臓器は魔素を蓄える用途と、貯えた魔素を変換して魔力にする役割があるんだ。その蓄えた魔力を詠唱によって出力ができるって感じだね。』
(それで魔法の出力はさっき言った通りか)
『そうだね。詠唱、かっこいいだろ?例えば君が今しようとした水の生成は、例えば、水よ、収束し、放出せよ。みたいな感じで出ると思うよ?量とかは知らないけど。』
(止めるにはどうするんだ?)
『質問は・・・まぁ大事だからいいか。止まれって考えるだけでできるから一度試してみるといい。とりあえず説明は今回はこれで終わりかな?できるだけ魔法を使える人間が増える事を祈ってるよ。じゃあね、稲守君』
(・・・)
脳内に響く謎の声に、もしかしたらダンジョンの影響で気がふれたのかと思った稲守は、謎の声の通りではなく、詠唱を考えて見る事にした。
「ふむ・・・こういうのは嫌いじゃないし好みだが、果たして本当なのか?やはり気でも触れたか?」
気になって仕方ない為、端末のメモアプリを開き、打ち込みながら考える。
(例えば、
「
手のひらをホテルに備え付けられてるコップにかざす。
ポタ、ポタ、ポタ
指の先から水が出てくる。
「マジか!?って止めるにはどうするんだ!?えっと・・・止まれ!」
声に出した途端水が止まる。
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