第17話 稲守任三郎とダンジョン調査二回目④

オークの死体を見つつ、討伐部位をどうするか考えていると何かが動く音が聞こえてきた。


ゴゴゴゴゴ


(なんだ?)


銃を構え警戒するが、音以外には何も起きない。


エリアを確認すると、来た道と先へ進む道の他に、別の道に進む入口があるのを発見した稲守は、その先へ進みたい欲に狩られるが、オークの検証をしていない事を思い出し踏みとどまった。


(せめてオークの再出現条件や時間は知りたい)


まずゴブリンと同様に耳を切り落とし、様子を見る事にした。

食料や水分を取りつつ様子を伺う。


(しまったなオークの動画を撮ってないじゃないか)


再出現時間だけでもと思い、携帯端末を準備していると、再び何かが動く音がして周囲を見渡す。


(またか)


先ほど出現した道とは別の道、方角でいうと西の次は東側に入口が出現した。


(とりあえずはオークだ。うん、俺はここから動かんぞ)


端末を操作し録画を始める。


(食料的にも後2日はいけるか)


そして、2時間、4時間、12時間が経過する。


(思ったより疲れたか眠くなってきたな・・・)


一方的ではあったが、オークの殺気、外したらこちらがやられる状況で集中状態を維持していた為か急に疲労感と眠気に襲われる稲守。


(やばい、とりあえず通路だ、あそこなら安全なのはわかっている)


携帯端末を録画状態にしたまま、通路へとよたよたと歩きつつ進むが少し歩き続けた後、倒れ込むようにして通路へとたどり着いた稲守は、バッグを枕にして、眠りについてしまった。


~???side~


「ほう、オークを倒すか」


『この人間はいいね。肉体的にはあれだけど精神力がハンパじゃないよ』


「オークの殺気で脚がすくみ動けなくなると思っていたんだがな・・・」


夕暮れ色に染まる何処か、机と椅子しかない空間で白い影と黒い影がしゃべっている。


『ねぇ、この人なら使えるんじゃない?』


「しかしあの水を飲まなければ使えないぞ?」


『簡単だよ。彼の持っている物を奪えばいい。」


「水を奪えば必然的に飲むか・・・」


『そうだよ』


「ではそうしようか」


黒い影が揺らぎ、姿を消す。


『人間の欲望をもっともっと引きだすには何がいいかなぁ』


白い影が揺らぐ。


『ねぇ、何がいいかな』


「ブモォ・・・」


先ほど稲守が倒したオークが暗闇から姿を現す。


『あの武器は強かった?』


「ブモッ!ブモモッ!』


『結構痛いかー。でも次のゴーレムにはどう?』


「ブモモモ、ブモー?」


『そっかー、きついかー。ならやっぱあれだね。直ぐにあの水に細工しなくちゃ!』


白い影は揺らぎ、姿を消す。

一人残されたオークは人間って怖いなと思いつつ、溜息を吐く。

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