第15話 稲守任三郎と一時帰還

休憩していると、捕獲したイワシに似た魚の存在を思い出した稲守は、鞄にぶら下げていたバケツを下ろし観察する事にした。


イワシのような魚は身体を折り曲げている状態で窮屈そうだ。


「・・・仕方ない戻るか」


このまま死なせてはいけないと思い、荷物をしまい、入口へと戻る。


サハギンの死体はまだ残っている為、ヒレ付きの手、歯数本と舌を切り取った。


ゴブリンエリアは言わずもがな。

倒して耳を切り取って終わりだ。


閉まっている扉の前で端末を操作して加賀を呼び出す。


『加賀です。どうかされましたか?』


前回より早い呼び出しだからか、今回は冷静な声だ。


「すみません詳細は報告書に書きますが、魚を捕獲したので、モンスターの部位と併せて一度お渡ししようかと」


『魚!?ダンジョンに!?わ、わかりました!回収班が待機していますので少々お待ちください!』


1分程で扉が開き始めると銃を構えた男女に護衛された、白衣を着た男性が現れた。


「ダンジョン庁研究員の刈谷です。その魚というのは・・・」


「こちらです。一応魚を捕獲した池の水も入っています」


「こちらに乗せてください。ちなみにエサは何を使いましたか?」


「えぇと、市販の練りエサですが・・・・」


「それも一緒にお願いします」


「わかりました。それと鉱石らしきものの一部と、近くの岩肌の欠片、モンスターの一部も良いですか?」


「鉱石・・・わかりました、そちらもこのカートに置いてください」


乗せ終わると、稲守は再びダンジョンへと戻った。


~刈谷side~


「まだ入って数時間だろうにこの成果とは・・・」


刈谷がぼやくと、側にいる補佐らしき人が怯えた様子で話だす。


「ど、どういう精神をしているのでしょうか・・・。だって初めてどころか人類未踏と言ってもいい所ですよ?僕だったらいつどこから何が出てくるか不安で一歩も歩けないですよ・・・」


「そうだな・・・。報告によればここは洞窟型。通路は道幅3m程で、天井も同じくらいだそうだ。しかも暗闇の中をライトだけで進む。俺にはできないね・・・。さて、国安、俺たちの仕事はこれの研究だ。水ももっと欲しかった所だし気合を入れるぞ」


「は、はい!」


刈谷達は研究所に戻り、稲守が持ち帰った魚を観察する事にした。


イワシに似たその魚は、合計4匹。外見的にはどれも同じだ。

餌は何か、何を食べていたのか、有毒なのか、骨の構造はと半分の2匹を解剖し、調べていく。


「現状解剖してわかった事は、何かを食べている痕跡がない、歯がとても少ない、そしてモンスターと違い溶けて消える事はないと」


「これは大きな発見ですよ。もしこの魚が食用であれば・・・」


「まだそこは早いが、それは俺も同じ気持ちだよ。しかしこの魚の体内から出た液体はなんだ?」


イワシから採取した体液を検査したのだが、血液とは違うものだという事がわかった。いや、それしかわからないのだ。


「そうですねぇ・・・。個人的にですよ?もしこれが、魔力なのだとしたらロマンがありますね」


「魔力ねぇ・・・。そうだ」


刈谷は、一つとある実験を思いついた。


「なんです?」


「ヒルに与えてみるのだどうだろうか」


「なるほど」


その後、吸血をする小型動物に与える等をしてみたが接種すらせず、血液に対応していた機器も全て反応を示さない為、困り果ててしまうのだった。


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