第14話 稲守任三郎とダンジョン調査二回目②
(まさかルアー釣りがトリガーか!)
竿を放り出し、銃に持ち替え銃を構える。
そして落ち着く暇も無く、水底から何かが上がってくるのが見えてきた。
「キシャウ!!!」
ルアーを咥えながら陸へと飛び出してくるサハギン。
そして。
「キシャシャシャ!」
毎度の如くこちらに物申すサハギン。
ドンッ。
結局この物申す動作によって、隙を晒すサハギンを容赦なく撃ち倒す。
(もしかして無機物と有機物で変わるのか?)
再び練りエサに切り替えて釣りを再開する。
すると先ほどと同じ様にイワシのような魚が釣れ、ルアーに切り替えると死体が地面に沈みこみ新たなサハギンが出現。
予想していた通りの為か銃をすでに構えていた稲守は、いつもの動作をするサハギンをいつものように撃ち倒す。同じことを3回ほど繰り返し、サハギンの再出現の条件がわかった。
(さて、サハギンの検証はこれでいいだろう。後は・・・)
死体の一部を切り取り、サハギンが出てくるまでの間に水を小瓶に入れ採取する。
飲むなら通路の方が安全と判断した稲守は、荷物を纏めて来た道の反対側、サハギンエリアの向こうへと進む。
ここで体長が悪くなるとまずいと冷静になった稲守は、先のエリアを見てから水を飲むと決め、奥へと進む。
分岐の道からゴブリンエリア、サハギンエリアへと続く道と同じ距離を歩くと、分かれ道が現れる。
(分かれ道か・・・)
マップを見ると、右側の道はどうやらダンジョン庁の人間が調査したエリアに繋がっているようだった。
それでは来た意味がない為、左側へと進んでいると、今までの道より道幅が広い事に気が付く。
今まではヘッドライトの光源によって、両方の壁も見えていたのが、徐々に広がっているのか、いつのまにか見えなくなっていた。
(今までとは違う)
銃を構え、ゴブリンエリアに初めて入った時と同様の冷静さと緊張感を持ちながら道を進む。
新たなエリアは地面が岩のような岩石によって構成されており、高低差もあるが、何より気になったのか岩石同士の隙間にあるライトの光を反射する物体だ。
はやる気持ちを抑え込み、エリア内の調査を始める。
壁伝いに歩きつつ警戒するが、聞こえるのは自分の心臓の音、そして服が擦れる音だ。
一歩一歩ゆっくりと進み、サハギンエリアと同様、何者とも遭遇せず新たな道の入口へとたどり着くが位置的には他のエリアと違い、先へ進む道の位置が違うのだ。
今までは入ってきた入口を南として、出口は北側なのだが、このエリアは東側に位置している。
そのまま入ってきた南側へと戻り。今度は中央の調査を始める。
広さ的にはゴブリンやサハギンエリアより広く、天井も高いように思えた。
サハギン同様何かアクションが必要かと思い、岩山に向かって空の薬莢を投げる。
キンッと小さな音を立てつつ転がり落ちる薬莢。
銃を構えつつ警戒をするが何も起きない。
とりあえず音ではないと判断した稲守は、岩山の近くまで慎重に近づくと、先ほど気になった隙間に有ったライトを反射する物体が何かを確かめる事にした。
外見上は図鑑や資料で見た磁鉄鉱に近いが、確証はない為、ライトを当てつつ端末で写真と映像を記録する。
念の為にと持ち込んだ小型のピッケルハンマーを使い、鉱石を叩く。
どうせ素人なのだから回収するだけマシだと言い聞かせ、10cm程の欠片を採取する。
鉱石をしまい込んでいると腕時計が目に入る。
入ってからどれほどの時間が経ったのか気になったので腕時計を見ると、入ってから10時間が経過していた。
前回の様に体力と精神が疲れる前に休むことを決めていた稲守は、エリアから出て少し歩いた場所で休憩する事にした。
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稲守任三郎と近代日本にダンジョンが出る的な話 正方 箱之介 @boxSquare
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