第12話 調査任命官加賀と稲守の報告
「至急これらの分析を、土と水は指定の検査機関に回してください!
「「了解」」
稲守が持ってきた素材が乗せられたカートが運び出されるのを見つつ、加賀は今後の事を考えていた。
今までダンジョンに入った志願者たちは倒すので精一杯で一部を切り取ったり、土や水を持ち帰ってきた例なんて無く、事例としては稲守が初だ。
(これは稲守様の報告如何によって何かが変わるかも・・)
その翌日、稲守から送られてきた報告書を見た加賀と上官は緊急会議の為、ダンジョン庁舎に来ていた。
「稲守任三郎、現役の猟師であり、千葉の森に土地を所有、初のダンジョン調査にて、ゴブリン8体、サハギン3体の討伐。土や水は現在研究機関によって検査が行われています」
「加賀君、彼の報告書、これは本当なのかね?」
加賀の上官であるダンジョン管理部の部長だ。
「はい、提出された映像がありますので、こちらを御覧ください」
加賀がリモコンを操作すると、背後に映像が映し出される。
『キシャシャシャ!キシャ!』
「この個体は仮名をサハギン。池に異物が投げ込まれるとそれを拾い池から出て見せつけるという習性を持っており、身体は筋肉質ですが、近接戦闘はしていない為、どれほどの力があるかは不明です」
「ふむ・・・・」
「さらにゴブリンエリアの検証について、再出現時間や、条件が事細かに記載されています」
「それは私も確認した。加賀君、稲守氏は我々の用意したスケジュール通りに入ってくれた。他の地域のダンジョン調査員は予定すら送ってこない。彼のバックアップをもっと手厚くしたい。銃の制限の解除も検討しよう。」
「私も同意見です。銃の制限もそうですが、弾薬や食料、それらを持つサポーターのような人を彼に付けるか、運搬用の車両等を与えるべきかと」
「わかった。ではそれらはこちらで手配しよう。車両について彼の意見を聞いて報告をしてくれ」
「承知致しました」
上官を見送って、端末を開くと丁度稲守から連絡が来た。
「加賀ですが」
「稲守です。ちょっとお願いがありまして」
「お願いですか?」
「えぇ、じつは・・・」
稲守からのお願いは、今回土や水を持ち帰った容器の事だった。
あれは稲守の私物だそうで、手に入れた会社はもう倒産しているらしく、同様のものが手に入らないかとの事だ。
「わかりました、そちらについては、研究所で最適なものがないか確認してみます。それと別件になりますが、今回ダンジョンに潜って頂いて、もし車両等が必要であれば手配しようと思うのですが、何か要望はございますか?」
「車両・・・ですか?」
「えぇというのも、もし可能ならば、モンスターの死体、それもサハギンをダンジョンの外に持ち出せないかと思いまして」
サハギンの件に関しては完全に加賀の独断だ。
「そうですねぇ・・・個人的には台車とかは音が出やすいので、微妙なんです。歩いた感じダンジョンの中は地面の凹凸が多いのが理由なんですが」
「わかりました。稲守様が必要になった時で構いませんので、その時に。それと、銃火器について、稲守様の今回の成果を上官が評価してくださったので、自衛隊でも使用している火器の許可を考えています。ただし、一度訓練をしていただく必要があるのと、武器の制限解除は連合国との協議が必要になりますので、時間はかかりますっが。」
「本当ですか!?そちらは是非お願いしたいです」
「では訓練の日付につきましては可能日をいくつか提示させていただきますので、端末の通知をお待ちください。提供できる武器も一覧が出ましたらお送りします」
その後は弾薬の追加購入、空薬莢の提供。
食料品や水の簡易検査キット等、必要な物があるとの事だったので、リストをくれれば手配すると伝え、電話が終了した。
「ふう・・・これから忙しくなりますね・・・」
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