第9話 稲守任三郎と初ダンジョン探索②
警戒しつつ池へと近づき、様子見の為に空の薬きょうを池に投げ込んでみる。
トポンと音を出しつつ沈んでいく薬莢。
しかし池の様子は変わらない。
慎重に池のふちに近づきのぞき込み、池の状態を見る。
(先ほどの音はなんだったんだ?)
音の正体を探るべく池を見ていると、岩場に何か生き物が潜んでいるのが見えた。
(・・・魚か?)
エサになるようなものも釣り竿もない為正体はわからないが、現状襲ってくる気配がない事から敵性生物ではないと判断した稲守は、水の採取を行う事にした。
鞄に入れていたプラスチック容器を池に入れ水を採取する。
(さすがに成分分析せずに飲むのはバカすぎるな)
水分補給用のゼリーもまだある為、危険を犯す必要はない。
(さて、モンスターもいないし先に進みますか)
先に進もうと池に背を向けた瞬間。
ザバァァン!
「キシャアアアア!」
(まずい!背後を取られた!)
モンスターを避けようと前に飛び出し前転しつつ受け身を取る。
(くそっ!)
銃は間に合わないと判断し、ナイフを取り出しつつモンスターを見る、
モンスターは見た感じゲームに出てくるサハギンと言った所か。
魚の頭部に、人間のような四肢、手足には水掻きがついている上、筋肉質な体格だ。
(ナイフはまずい!隙を作ってライフルで倒すしかないが・・・)
「キシャシャシャ!」
何かをこちらに向けながら怒るように声を出すサハギンらしきモンスター。
よく見ると稲守が捨てた薬莢に見える。
(もしかすると・・・)
警戒しつつ、懐に入れていた薬莢を池に投げ込む。
するとサハギンは投げ込んだ薬莢を追いかけ再び池に潜っていった。
(今だ!)
ライフルを持ち直し、ボルトを操作し直ぐに撃てる準備をする。
そして
「キシャー!!!」
再びサハギンは池から飛び出てこちらに薬莢を見せつける。
その瞬間。
ドンッ!
ライフルの引き金を引き、サハギンに銃弾が命中する。
「キシャ!?」
音と衝撃にびっくりしたのか、両腕を交差する様に顔を守るも、秒速200メートルを超える銃弾を防ぐ事ができず、頭部に直撃を受けたサハギンは両腕を交差させたまま、前のめりに倒れた。
(危なすぎるだろサハギンめ・・・)
先ほど薬莢を捨てた時は即座に池から飛び出てきたが、その前は池の底にいた為水面に出るまでに時間がかかったのだろう。
とりあえず先ほどのゴブリンと同様にサハギンの検証をする事にした。
まずは討伐してからの時間を計る為、死体が消えるのを待つ。
しかし10分、15分と経過するが、サハギンの死体はそのままだ。
(とりあえず持久戦って事でこのまま待たせてもらうぞ)
食料を食べつつ、銃の手入れをしながらサハギンの死体を観察する。
「うーむ・・・」
倒してから2時間が経過した。
サハギンの死体は相変わらずそのままで、検証の為新たに薬莢を1時間に一度のペースで投げ込むが新たなサハギンは現れず。
(もしかするとこのサハギンは一度切りなのか、それとも討伐証明として体の一部を取ると消えるのか・・・)
そのまま更に2時間待ち続けるが変化はない為、サハギンの死体から討伐証明となる物を切り取る事にした。
(とりあえずは頭のヒレと・・・水掻きか)
ナイフの頭部にあるヒレのような物、そして手足の指を水掻き事切り取る。
(よし、このまままた検証だな)
15分、30分と見るもサハギンの様子に変化は無く、1時間が経過しようとしたその時、
サハギンの死体が地面に吸い込まれ消えていく。
(なるほどな、つまりサハギンは最低でも4時間は体の一部を切らなければそのまま、そして切り取ると1時間って感じか)
新たなサハギンが生まれてくると予想し、警戒をする稲守。
(薬莢以外の物も試すか・・・)
食べ終わった後のエナジーバーの袋ゴミを池に投げ込む。
そして1時間、2時間が経過するがサハギンは現れず、袋は水面に浮いたままだ。
(このままいても時間の無駄か・・・)
残弾はまだあるが、このまま進んだ場合の事を考えた結果、検証不足になるのが嫌な稲守は一度ダンジョンから出る事にした。
(一度戻ろう。物資も補充したい。それと体力よりも精神的にきついなこれは)
来た道を再び警戒しつつ戻り、ゴブリン広場を討伐しつつ通り抜け、入口へと歩く。
(ゴブリンは相変わらずだったな・・・)
討伐証明であるゴブリンの耳4つ、サハギンのヒレ、水掻き付きの手とヒレ、池の水と周辺の土と草を持ち、初のダンジョン探索を終えた。
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多数のご閲覧誠にありがとうございます。
何度か誤字等確認をしてからの投稿としていますが、至らない部分がある事と思われます。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
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