第7話 稲守任三郎と初ダンジョン初戦闘

「1週間・・・わかりました。ありがとうございます」


「ご武運を・・・」


女性の表情が少し悲しいような、悔しいような表情に見えたが、気にしたらダメだろうと思いつつ、俺は返事を返す。


「行ってきます」


ゲートが開いた先は洞窟の入口の様な形で土のような鉱物ようなもので構成された穴、そして暗闇だ。


「さて鬼が出るか蛇が出るか・・・あぁゴブリンだから鬼はでるのか」


ゲートが閉じるのを確認した稲守は、進む前に、ヘッドライトの灯りを付け、ライフルをケースから取り出し、弾倉に弾を込める。


(ホテルでやるのはダメだろうと思ったがここでやるの面倒だし後で聞いてみるか」


ジャケットのスロットに弾が込められた弾倉を入れ、一つは持っているM220散弾銃へと装着し、ボルトを引き、弾倉を外し薬室に入った一発分を込め直す。


「よし、行きますか・・・」


ダンジョンマップによれば、直ぐに分かれ道に到達すると記載されている。


(確か左側は未探索だったな・・・)


左に進みつつ、端末のマップを見ていると、端末の各種センサーがマップと連動しているのか、歩くだけでマップが更新されていく。


(しかし暗いな・・・広角タイプだと範囲は広いが奥はあまり照らせないのが難点か)


壁面には何もなく、地面は固められた土、脇道が急に現れないか注意しながらヘッドライトを頼りに進行する。


3分程歩き続けると、少し先の方に灯りらしきものが見えてきた。


(あれは・・・?)


銃を構え、用心しながら進むと、かがり火のようなものが左右の壁に設置された広い空間への入口が見えてくる。


(ここがモンスター出現ポイントか)


足音を立てないようにゆっくりと時間をかけて広い空間へと侵入する。

一歩に数十秒かけるように一歩、一歩と牛歩より遅い歩みで進む。

エリア内はそこそこ広く、広さ的には約50m四方程だろうか、だだっぴろい空間の奥、出口への道を塞ぐように、何者かがいるのが見える。


「ギャギャ?」


(恐らくあれがゴブリン、数は一体か)


ライフルのボルトはすでに操作してある為、弾倉は薬室にある。後は引き金を引くだけだ。

アキュートリガーを押し込み、いつでも撃てる準備をし、狙いを定める。


「ギャー・・・」


ゴブリンはこちらに気づいていないのか、こん棒を手に取り、見定めるように持ち上げたり、振りかぶったりと戦う準備をしているように見える。


気づかないうちにライフルで倒したいが距離的に命中するかどうか怪しいのと、ゴブリンの動きが見たい稲守は、地面を蹴り、音でゴブリンをおびき出す事にした。


タンッ


「ギャ?ギャギャ―!」


音の方向へ振り返ると同時に稲守を発見したゴブリンはこん棒を構えつつ、こちらに近づいてくる。


目測40m


「ギャギャー!」


威嚇なのか、声上げ、歩きながら近づくゴブリン。


「ギャー?」


目測30m


こちらが動かない為か様子を伺いながらもゆっくりと近づくゴブリン。


一歩、一歩と近づき、射程距離である25mを切ったその瞬間、稲守はトリガーを引く。


ドンッ!と音と共に発射されるスラッグ弾はゴブリンの頭部へと命中。


「ギ・・・ギャ?」


命中と同時にボルトを操作して次弾の準備をしつつ、ゴブリンの様子を伺う。

倒れてピクリとも動かないゴブリンに慢心する心を押し殺し、警戒を続ける。

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