第4話 稲守任三郎と武具
建物に入った時と同様に身分確認を済ませ、暗幕の奥へと案内される。
暗幕の奥には防弾チョッキや膝や肘を守るサポーター、壁一面には銃が金具に固定されており、数は30種類以上あるようだ。
「こちらから3種をお選びください。何か質問はございますか?」
稲守は手を上げ、質問をする。
「はい。3種とは防具も含めてでしょうか」
「武器のみ3種制限となっていますが、防具には制限はございません。しかし、余り多くの防具を装備すると、破損させた場合罰金が科せられる場合があります」
「わかりました」
それからは武器を一本一本手に持ち、使用感を試す。
狩猟用で持っていたナイフと同モデルのナイフ等を手に持ち、銃もせっかくもらえるのだからと新品の中で良さげな物を選んでいると、ケースに入れられた銃が目に入った。
「M220ハーフライフル・・・」
自分が持っているM210と比べると反動が少なく、弾道特性が良いのが特徴で、スラッグ弾と相性が良いとか。
弾倉も通常の猟銃と違い薬室含め5発装填が可能と表示されている。
「これにするか・・・」
「アタッチメントはこちらからお選びできますが、どうされますか?」
続いてライフルに装備するアタッチメントを選ぶ。
アタッチメントは4個まで無償らしく、それ以降も自腹ではあるが、購入は可能との事だ。
「んー・・・」
ダンジョンの情報がない以上、用心に越したことはない。
悩んだ末、汎用性のある1-8可変倍率スコープと弾倉を3つ貰う事にした。
「変更する場合は、お選びいただいた物と交換となります」
「わかりました」
その後は防弾チョッキや、膝のサポーターを選び、武器は提供されるケースに入れる事等を説明され、最初に案内された47階の部屋へと再び移動する。
「それでは本日の説明は以上となります。こちらはお渡しする携帯端末と冊子になります。不明点がございましたら携帯端末にある問合せアプリでご連絡をお願いします。」
「わかりました。本日はありがとうございました。」
その後はタクシー乗り場へ案内され、荷物を積み込み、家に届けられた加賀は、ダンジョンへ入る日まで何をすべきかを考える。
「最近していなかったし狩りにでも行くか」
2050年現在、千葉県は東北から南下した熊を筆頭に、何十年も前から繁殖し続けているキョン、そして5年前当時の政府が近年最大の愚策とまで言われた海外のオオカミ種によるキョンの駆逐実験失敗によって野生化した影響から、野生動物の楽園と化している。
祖父から受け継いだ山で、自ら建てた小屋で仕留めた獲物の解体作業を行っていると、渡された携帯端末から通知音が鳴る。
「えーっと、ダンジョン内での取得物についてのお知らせ?」
通知音は端末内にあるメールアプリによるものだった。
メールにはダンジョン内で取得したものは、本人の自由だが、ダンジョン庁へ提供するとその分報酬が貰えるらしい。。
「ほう、自由ってのはありがたいな」
モンスターの材料で武器を作っても良いという事になる。
もしだが、魔法を取得したとしたら、それは公開する義務も無く、秘匿しても良いという事になる。
(まぁ、もし魔法とか手に入ったら秘密にせず公開した方が・・・でも人体実験とかさせられたらいやだな・・・)
後に魔法を取得する事になり、この杞憂が杞憂ではなくなるかもしれない事は今の稲守には知るすべもなく、ダンジョンへ入る日まで、山に居続けるのであった。
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