第3話 稲守任三郎とダンジョン庁

47階の表示で数値の上昇が止まり、エレベーターも停止する。

扉が開き、再び二人に連れられ、1階と同じような長い通路を歩く。


「こちらの部屋へ」


一番奥の左側の部屋の扉が開き、中へ入るようにと促される。


ここまでくるともう逃げられないと思った稲守は、心の中で気合を入れ、中へと入る。


中は机二つと、椅子が6つ、観葉植物だけの簡素な部屋だ。


「こちらにお座りください。それと受け取った案内と所持品をこちらのカートに出してお待ちください」


二人が部屋から出て、ガチャリと施錠された音が簡素な部屋に響く。


言われ通り封筒と、案内書、スマートフォン、ノートPCをカートに乗せ、待つ事数分。


再び扉からガチャリと音がすると、案内した男女2名と、政府の人間であろう1名の女性が室内へと入り、対面の席へと座る。


「私、ダンジョン庁、調査員担当係の加賀と申します。発言はこちらから質問した時だけお願いします」


任命官の加賀による調査員の説明が始まった。


「まず、調査員任命書に基づき登場して頂きありがとうございます。調査員の事は何か存じている事はございますか?」


「はい。ダンジョンに入り、内部を調査、報告する事で報酬を貰えるという程度になりますが」


「結構、それでは、これから調査員制度の説明を始めますので、こちらの資料を確認していただき、質問等ございましたら、挙手をお願いします」


「まず、調査員に選ばれた方は、お渡しした冊子の2枚目、調査員守秘義務事項を遵守していただきます」


機密事項には、身分を他人に明かさない、ダンジョンの情報を他人に流布しない等、独り身で友達も少ない自分にとっては特に難しくない内容だった。

他には、公的交通機関の使用の禁止や、長距離の移動をする場合のダンジョン庁手配のタクシー利用の義務、そして現在使用している携帯やPCの押収だ。


押収についての質問をする為、手を上げる。


「どうぞ」


「押収についてですが、押収後の連絡手段や、ものを買う時の決済はどうすればよろしいですか?」


「こちらから専用端末をお渡しします。そちらはダンジョン庁専用アプリ、そして決済アプリ等がインストールされていますので、そちらのご使用をお願いします」


「わかりました。質問は以上です」


質問したい事はいくつもあるが、どうせ逃げられないのと時間がもったいない為、切り上げる事にした。


「それでは説明の続きになります」


続いて任務の内容や、ダンジョンからの出土品の管理方法の説明が始まった。


「任務は、こちらが指定したダンジョンへの調査になります。モンスターを討伐、土や水、草木があれば採取等、基本報酬とは別に成果に応じて特別報酬があります。調査報告書は端末に入っているアプリによる報告をお願いします。」


携帯端末にある自動マッピングアプリや計測アプリの説明等を終え、次はダンジョン内で携行可能な武器についてだ。


「武器については、この説明が終わった後、武器庫へ案内します。そちらで3種類まで無償で提供させていただきます。銃火器につきましては稲守様は免許をお持ちのようなので一部銃火器の使用が可能となります。以上、ここでの説明は終了となりますが、質問はございますか?」


「はい、武具についての質問になりますが・・・・」


「武具については武器庫で質問を承ります。他の質問はございますか?」


遮るように断られてしまった。


「いいえ、ありません」


「それではこれから武器庫へと案内させていただきますので、荷物を纏めて頂き、起立してください」


再びエレベーターへと搭乗し、39階へと移動する。


エレベーターが止まり、扉が開くと、扉やエレベーターホール等は無く、鉄格子に囲まれており、用意には入れないようになっていた。

暗幕によって奥が見えないようになっており、見えるのは鉄格子と取り付けられたカードリーダーだけだ。


加賀がカードリーダーへカードをかざすと、暗幕が開き、軍服を着た男性二名が現れる。


「調査員任命官の加賀です。調査員へ武具の説明に参りました。同行者は調査員1名、護衛官2名です」


「そちらでお待ちください」

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