第4話 話の行方

 キーンコーンカンコーン。キーン……


 チャイムの音の折り返し地点で、るいは異変に気づく。


「やばっ!」


 慌てて本を閉じて、元の場所へ戻す。まだまだ序盤だが、いつもより読み入ってしまったらしい。いや、単に図書室への到着がいつもより遅れていただけか。ただこのチャイムも二段階のもので、まだ今のチャイムの間に教室に入れれば遅刻にはならない。


 だから廊下を走らない程度の早歩きで教室へ向かう。


 そして歩きながら、るいは「涙止人」の内容に思いを馳せる。



——どうしてルイは、自分に人を助ける力があるかもしれないのに、旅立ちをためらっているんだろう。


 自分のこと、父親のこと、涙止人のことを知れるかもしれないのに迷うんだろう。


 これまで閉じこもるような生活を続けていて、外へ出る勇気がまだないだけなのか。それともまだ、自分のやりたいことへの気持ちが整理つかないとかなのか。


 読者としては、どうせ旅立つんでしょ!? って思っちゃう。だって、このまま家で悩んでいたって、なかなか物語は進まないだろうから。


 けどそんなの、本の都合だし、読む側が思う都合だし。他人と本人の感覚は違うし。


 ルイが納得して進めたらいいけど、でも、エミルみたいな子に強引に誘ってもらうのもアリかもなんて思う。


 どんな道を進むにしても、きっと一つの人生なんだ。


 ルイは何か答えを見つけられるかな?——

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る