第22話

『……しょうがくないよ。杏、好きなんでしょ。まだ瑞樹君の事。だったら……』

『……苺。チョコレートって恋愛に似てるよね? 溶けたら一瞬で終わる。そのあとには何も残らない』

 電話口から聞こえてきた詩みたいな言葉。

 チョコと恋愛が一緒? 

 それってどういう意味? まぁ、振られたら恋も一瞬で終わるけど。

 それとチョコが一緒って……

 杏の言葉にパニックになりかけていると、電話口から彼女声が聞こえてきた。

『苺には、まだ早かったかな? 要するに、私とあいつの関係は、溶けきったチョコレート。もっと解りやすく言うなら、砕けて粉粉になったクッキー。一度、粉々になったクッキーを再び修復するのは絶対不可能。そして、私とあいつの関係がまさにそれなの。だから苺、一度、壊れた物を修復するのは、他人が思う程簡単じゃないんだよ』

 それきり電話口から杏の声は、聞こえなくなった。

 無言になった携帯電話の画面に映る自分の顔は、絶対無表情に違いない。

 ☆ ☆ ☆

 もしも時間が戻るなら。

 私は、あの日に戻りたい。

 今の私が、あの日の自分と杏にちゃんと向き合えたら……

 きっと杏を傷つけずに済んだ。

 あの日の杏へ。

 あの時は、ごめんね。

 でも、一つだけ約束するね。

 杏は、また瑞樹君と付き合うよ。

 だって、溶けたチョコは、何度だって固めればいい。

 砕けて粉々になったクッキーも何度だって作り直さばいい。

 時間は、かかるけど修復は絶対可能だから。

 もしも時間が戻るなら。

 あの日の自分と杏に伝えたい。

 今の私にとっても、杏と瑞樹君は憧れの二人だよって。

 太陽みたいに眩しくて、夜空に光る星屑みたいにキラキラ輝いてるよ。

 それと、あの日以上に幸せオーラ全開で夫婦漫才に励んでるよ。

 もう、こっちが心配になるくらいにね。

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チョコ恋 なつかわ @na_tu_ka_wa

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