第20話

『苺。今年は、瑞樹に手作りチョコを渡そうと思うんだ。あいつは、私がお菓子作り苦手って知ってるから買ったチョコでも喜んでくれる。けど、買ったチョコにも愛情は籠めれるけど、やっぱり手作りチョコの方が愛情が伝わると思うんだ。だって、チョコ自体に想いを入られるから』

 太陽みたいに眩しくて、夜空に光る星屑みたいにキラキラ輝いて、恋人の瑞樹君に自分で作った手作りチョコを渡すんだと私に勝利宣言までしていた。

 それぐらいバレンタインを楽しみにしていた。

 バレンタインは、彼女の誕生日でもあるので今年は、それもあって特に気合が入っていた。

 でも、今年、杏は、瑞樹君の為に作った手作りチョコを彼に渡す事すできなかった。

 いや、それ以上にバレンタイン、誕生日までが彼女にとって思い出したくない日、最悪な記念日になってしまった。

 そんな事になってるとは知らなかった私は、彼女に、いま最も訊きたくない話題を話し始めてしまった。

『杏。どうしよう。バレンタインのお返しに、紘くんからキスされちゃった。あぁ! でも、ホワイトクッキーもちゃんと貰ったよ。それも紘くんも私に対抗して、手作りでびっくりしたよ。そう言えば、杏は、瑞樹君からバレンタインのお返しは貰ったの? お互い忙しくってなかなか会えないって言ってたけど?』

 すると、さっきまで普通に話していた杏の声が、急に低い声に変わった。

『苺にはまだ話してなかったけど、私、あいつと別れたから。あぁ、でも勘違いしないでよ。別れようって言ってきたのあいつ方だから』

『……』

『もう、なんで苺が黙り込むの? 私、全然引きずってないから。でも、あいつひどくない? 二月十三日まで普通に交際してて、二月十四日の朝になった途端突然別れて欲しいって、何様なのあいつ。今年の誕生日、あいつのせいで色々計画狂ったし』

 電話口から聴こえてくる杏の瑞樹君への怒り言葉。

 けれど、私は、言葉に瑞樹君への未練を感じた。

 だって、引きずっていないのなら、自分から引きずってないとか言わないはず。

 ☆ ☆ ☆

 もしも、もしもの話。自分がもし、紘くんに突然振れらたら、自分だったら悲しくて、絶対引きずって、すぐに立ち直らない。

 大好きな人に急に振られるだけでも、ショックで立ち直らないのに、杏は、それにプラスして、自分の誕生日であるバレンタインに恋人の瑞樹君に突然別れを告げられた。

 それなのに……簡単に気持ち切り替えられるの?。

 杏は、悲しくないの? 何も言わなかった?

 ねぇ? 瑞樹君の事本当にもう、好きじゃあないの?

☆ ☆ ☆

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