第17話

『紘くん。誕生日おめでとう!』

『苺。ありがとう。今年は、どんなチョコかな?』

『今年は、紘くんと付き合い初めて五年目だから、初心に帰って手作りチョコにしてみたの』

『えっ!?』

『もう紘くん、そんな顔しないでよ。本音を言うと私も正直不安だったんだよ。でも、杏が私に言ったんだ。買ったチョコにも愛情は籠めれるけど、やっぱり手作りの方が愛情が伝わると思うんだって。それを訊いて思ったの。紘くんは、いつも私に、手作りの物を渡してくれる。私が、あの日、そうお願いしたから』

 紘くんとの最初のホワイトデー。(中学三年の時)

 私は、紘くんにあるお願いをした。

 そのお願いとは……ホワイトデーのお返しは紘くんの手作りの物が欲しい。

 私のお願いは、紘くんにかなりの負担を掛けるものだったけど、彼は文句一つ言わず、むしろ毎年何作ろうかなとまで言ってくれた。

 翌年のホワイトデーから、紘くんは、私に髪留めや高校に入ってからは、アクセサリーなどをお返しでくれるようになった。

 一方、私はお願いと紘くんに甘えて、毎年店で買ったチョコをそのままバレンタインチョコとして紘くんに渡していた。

 けれど、専門学校に入学して、彼と付き合い初めて五年目を迎える今年。

 これからも、紘くんと付き合っていく為に私も、もう一度手作りチョコに挑もう。

 どんな形、味になってもこれが今の私。

 けど、もう一度手作りチョコに挑もうと思ったのは、高校時代からの友人である白川杏のあの言葉のおかげ。

 そう、私に向かって頬を真っ赤にしながら、ビターチョコとミルクチョコ、あと、メッセージカードを持って。

 

{苺。今年は、瑞樹に手作りチョコを渡そうと思うんだ。あいつは、私がお菓子作り苦手って知ってるから買ったチョコでも喜んでくれる。けど、買ったチョコにも愛情は籠めれるけど、やっぱり手作りチョコの方が愛情が伝わると思うんだ。だって、チョコ自体に想いを入れらるから}


 これを私に言ってる時の杏の顔は、太陽みたいに眩しくて、夜空に光る星屑みたいにキラキラと輝いていた。

 いいなぁ。私も、紘くんとあんな風になりたい。

 さすがに夫婦漫才まではやりたくないけど、でもあれくらい気を使わない関係になりたい。

 それぐらい、二人はお互いの事が大好きで、私が入る隙間なんて全然なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る