第15話

また、杏と恋人に戻る事ができた今だから、後悔している。


if もしも時間が戻るなら

俺は、自分の事しか考えず、一方的に杏を振ったあの日に戻りたい。

高校三年の二月十四日 付き合って三年目の杏の誕生日。

俺は、あいつの誕生日に、

あいつが絶対聞きたくない、言われたくない言葉を言ってしまった。

「別れて欲しい」

それも理由も言わないで、ただその言葉一言だけ。

俺のその言葉にあいつは、涙も見せずに、無表情でただ一言。

「分かった」

俺は、あの時、あいつの気持ちに気づくことすらができなかった。


if もし時間が戻るなら

あの日に戻って杏に、あの日言えなかった言葉、本来は、言うはずだった…いやぁ、絶対言わないといけなかった言葉を言いたい。

「誕生日おめでとう」

そして、あいつの笑った顔が見たい。

だって、十八歳の誕生日は一回しかないんだから。

俺は、そんな大切な日を自分勝手な気分で、最悪な日にしてしまった。


自分勝手のわがままで、自分からあいつと別れたのに

結局俺は、あいつを忘れる事なんてできなかった。

忘れようと、携帯からあいつの思い出を全てを消去しても、

携帯番号、あいつとの思い出は、忘れる事はできなかった。

それぐらい俺はあいつの事が好きだった。


だから、杏に新しい恋人がいると彼女の友人が居ると言われた時は、自分から振ったのに心が痛かった。

でも、これは嘘だった。

けど、俺が振った時、あいつはこれ以上に傷つき、泣きたかったはず。

だけど、それを俺に見せなかった。いや見せる事ができなかった。

理由は、手作りチョコを作っていたから。

二月十四日は、バレンタインデー。

女の子が好きな男の子にチョコをあげる日。

杏も俺にチョコを渡す為に、苦手なお菓子作りを頑張って作っていた。

それなのに俺は、本当に馬鹿野郎だ。

気持ちだけじゃあなくて、あいつの頑張りまで奪ってしまっていた。


if もし時間が戻るなら

もう一度あの日に戻りたい。

そして、空白の一年を埋め直したい。

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