第5話

白川杏 瑞樹の元恋人。 

 二人が初めて出会ったのは、高校の入学試験の帰り。

 瑞樹が学校前のバス停で、帰りのバスを待ていたら、といきなり声を掛けられた。

「あの? 隣いいですか?」

「えっ?」

 突然話しかけられた瑞樹は、声を掛けてきた女性(受験生)を警戒するように見る。

 そんな瑞樹の様子に気がついたのは、

「あの? ごめんなさい。わたし、白川杏って言います」

「古村瑞樹です」

「……あぁの? 古村さん。初めてお会いした方に、こんなことお願いするのは申し訳なんですか? 少しの間、話し相手になって貰えませんか?」

「えっ?」

「あぁ! やっぱり! 大丈夫です。友達とも違う学校を受験することになって、そもそも、この学校を受験するのは、私一人で、知り合いが誰もいなくて。だから……つい」

 次の言葉を言おうとした瞬間、二人のいるにバス停に、バスがやってきた。

「じゃあ? 私、親に電話しないといけないので」

 とバス停から離れようとしたら、瑞樹が杏の左腕を掴む。

「えっ?」

「白川さん。僕の乗るバスは、このバスではありません。だから、白川さんよければ、もう少しおしゃべりしていきませんか?」

「はい!」

 この運命と言える杏との出会いから二か月後(入学式)、僕たちは再開し、一学年が終わる頃には恋人になっていた。

 けれど、、卒業が近づくにつれて、自分の中で彼女の存在が邪魔になった。

 そして、一年前に二月十四日に一方的に別れを告げた。

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