第40話
20時 30分 事務所:仕事場
「担当弁護士、森咲良……っと。よし終わった。はぁ? それにしても、世間一般がクリスマスイブ時に、私は一人寂しく仕事をしているのだろうか?」
まぁ、弁護士と言う特殊な仕事を選んだのは、自分なのだが……まさか、クリスマスイブまで仕事をしているとは、夢にも思わなかった。
それも、まさかの3年連続。
「まぁ……そもそもわたし、恋人どころか好きな人もいないけど」
パソコンで作成した書類をコピーしながら、森は一人でボケとツッコミをする。
「さぁてっと、コピーも終わったし、ファイルファイル」
コピーし終わった書類を、本棚から取り出した○○さん離婚調停と書かれた分厚いファイルの中に入れた。
そして、そのファイルを再び本棚に戻しながら……
「……堀川さん。さっき、私に対して口ではあぁ言っていたけど、本当もう、旦那さんの事……」
堀川夕夏は、裁判で旦那との離婚が正式に決まるとその日に、市役所に行き離婚届と復氏届を提出した。
※復氏届とは、結婚して配偶者の姓を名乗っていた人が、結婚前の旧姓に戻ることができる手続き。
そして、石河夕夏から旧姓の堀川夕夏に戻り、勤めていた会社も辞め、元旦那と暮らしていたマンション(名義は彼女)も売り払った。
「……恋が言ってたのはこういうことか?」
自分は、今まで誰かもを好きになったことも、恋人すらできたことがない。
なので、今回の依頼人である堀川夕夏の件は、他の人にやって貰うつもりだった。
でも、彼女と何度か会い、打ち合わせを重ねていく中で、自分の中で意識が少し変わっていっていった。
「……堀川さんは、私が私の手で救いたい」
だけど、私は、一度も恋愛した事がないので、恋愛経験豊富な親友に電話で意見を求めた。
親友の名前は、上岡恋(かみおかれん)
★
『……まぁ? 社会的抹殺だよねぇ?』
『ままま抹殺?』。
親友の言葉に森は思わず電話だということを忘れて叫んでしまった。
『ってそうでしょ? 離婚したとはいえ一度は愛しあって結婚したのに、それをあとから現れた泥棒ねこいやぁ? 泥棒親友に横取りされただけじゃなくて子供つくられたんじゃあ、抹殺ぐらいやれないとその依頼人さん可哀想だよ!』
「でも…・抹殺は流石にやり過ぎじゃあない」
「そうかな? 私が同じ立場ったら抹殺どころか? 迷わず殺すねぇ?」
「……」
親友の「殺す」発言に、森は言葉を完全に言葉を失う。
「咲良。なんで人って、自分にないものを欲しがるんだろうねぇ? みんなが傷つくって判っているのに」
「……けど、やっぱり、他人の大切な者は奪うのはダメだと思う」
恋の言葉に、咲良は言葉を取り戻す。
「……私もそれだけは人として絶対やってはいけないし、やり返してもダメだと思う。けど……」
恋は、一旦言葉切り、森に一言こう投げかけた。
「誰かを好きになったら、きっとその気持ちを私は止めることができないと思う。だから恋って盲目で残酷な生き物なんだと思う」
★
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