第41話

21時 

「ここはゴミ屋敷が! ゴミ多すぎだろう!」

 結局、この時間まで、仕事をしていたのが自分(社長は除く)だけだったので、咲良が一人で全部屋の掃除する羽目になってしまった。

 別に、掃除をすること自体は、全く苦ではない。

 むしろ、掃除は好きな方だ。

 ただ……ゴミのあと片付けは別だ。

「なんなの! なんでこう毎日、ゴミ袋数袋分のゴミが出る訳! おかしいでしょ?」

 確かに、毎日うちの事務所には沢山の相談人や依頼人が訪ねてくる。

 それにしてもゴミの量が多すぎる。

 咲良は、大量のごみで満帆になったゴミ袋の紐を力任せに結びながら、周りに誰もいないいことに、日頃言えない愚痴をぶちまいていた。

「……あの?」

 突然、扉が開き、自分しかいないオフィス内に、一人の男性が中に入ってきた。

「!」

 もしかして? 今の声、聴かれた?

 男性が入ってきた扉の方を見る。

「あぁ! ごめんなさい! 貴方を驚かせるつもりはなかったんです。ただ……」

 すると、男性の方も咲良の視線に気がついたのか慌てて自分に向かって声を掛けてきた。

「……あぁ! もしかしてお手洗いですか?」

「えっ? あぁ! はい」

 咲良の「お手洗いですか?」の言葉に、オフィスに突然入ってきた男性は、一瞬戸惑いながらも最後は「はい」と返事を返す。

「……やっぱり! あぁすみません! うちの事務所どういう訳か、社長の好みかなんかでお手洗いが地下があるんです! そのせいで、トイレを借りられる方から毎回のようにクレーム出るんです。怖いと! まぁ? 私もできるならあのトイレはつ……あぁすみません! 今回のことは、私から古橋にお伝えしておきますので」

 そう、男性に告げると、ゴミ袋の両端を結んでいた咲良は、ゴミ袋をその場に置き、男性の所まで行くと深々と頭を下げる。

「ああ頭を上げて下さい! 貴女にそんなことされたら、僕が彼女に怒られます」

 いきなり自分に対して頭を下げてきた咲良に、男性……樹怜は戸惑う。

「えっ?」

 咲良は、男性、樹の言葉に下げていたゆっくり上げ、彼の顔を見る。

「……樹さん?」

「……久しぶり。まさか、あの? 朔良が弁護士とか世の中解らないものだなぁ? けど、この法律事務所は今すぐやめた方がいいぞ! 問題に巻き込まれたくなければ!」

「えっ?」

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