第38話

『これは、恋なんかじゃあ!』

 藤井からの突然の壁ドン&普段と違う彼の表情と甘い声に、來未は逃げる様にキッチンにやってきた。

 そして、誰もいなくなったキッチンの流し台で布巾を一人洗いながら、來未は、さっきの藤井との出来事を思い出し、思わず顔が真っ赤になる。

※兼城と矢崎は、キッチンの掃除、そして、軽めの仕込みだけして帰宅した。

「壁ドンされたからって勘違いするな! 藤井君は、私の可愛い後輩くん!」

 そう! 藤井くんは、私の可愛い後輩くん。

 だから、さっきの壁ドンだって……

 自分をのけ者にして、追い出そうとした私への……  

「全く、壁ドンしたのが私だったからよかったけど、もしも相手が、真理華ちゃんや栞だったら大変なことになったのよ! 熱っ」

 温水で左手に触れる。

「なんで! 私ばっかりこんな目に遭わないといけないのよ!」

 來未は、布巾(2枚)を漂白剤と水が入った白いタライ(布巾洗濯用)に投げ入れ、温水が触れ、軽く火傷してしまった左手人差し指を冷水で洗いながら……

「私は……」 

 誰か教えて!

 この気持ち誰にぶっければいいの?

 私は……

「……総一郎さん」

 ☆

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