第35話
「スタッフさん。コーヒー2杯お願いします」
藤井を残して、お盆を持って再び、キッチンにコーヒーを受け取りに戻ってきた來未は、キッチン内で熱い言いながら、料理を作っている兼城と矢崎に声を掛ける。
「すみません。今、手が離せないでじ……」
「兼城君。矢崎君忙しいそうだね?」
「七橋?」
「七橋先輩? お疲れ様です」
自分達に声を掛けてきたのが、七橋だと気づくと、二人は同じタイミングで彼女を振り向く。
そんな二人に対して、來未は、笑顔を壊さないまま……
「お疲れ様。なんだか忙しいそうだね?」
「そそんなことは……」
來未の言葉に、矢崎悠は、慌ててそんなことはないと否定しようとするが……
「確かに忙しいのは解るけど、二人して、ホールスタッフの呼びかけを無視するのは……」
「七橋先輩! 俺たちは、別に先輩の無視してなんかいませんよねぇ? ねぇ? 兼城先輩?」
矢先の問いかけに、テーブルで盛り付け作業をしていた兼城に同意を求める。
「あぁぁ! そうだよ七橋! 誰もお前のことなんか無視してないだろう? それに忙しい時は、互いの仕事のヘルプに入ったりするだろう?」
と、兼城も矢先の言葉に同調しながらも、七橋の言葉に言い訳するわけではないが、「rose」内の暗黙のルール(就業規則)を持ち出す。
「……へぇ? それ? お前らが言う?」
「「!」」
学生時代から、來未のことを知っている兼城は、彼女の口から飛び出した「お前」って単語に、二人は同時に言葉を失う。
矢崎に至っては、初めて見る來未の表情と普段とは違う言葉遣いに、完全に開いた口が塞がらない。
「……まぁ? 確かに、今は二人とも、手が放さないみたいだから、珈琲、私が自分で作って持って行くから、兼城君と矢崎君達は、料理頑張ってね?」
「……」
二人にそう告げると、來未は、なにごともなかったかのように珈琲を作り始めた。
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