第33話

同時刻 事務所 

 事務所で、パソコン作業をしていた樹は、突然鳴った内線に作業を手を止めて出る。

{店長お疲れ様です!」

「七橋!」

 内線の相手は、來未からだった。

{すみません店長! 今お時間大丈夫ですか?}

「別に大丈夫だけど? どうした? ホールで問題でも起きたのか?」

 樹は、七橋がキッチンにある緊急内線から掛けているとは、思ってもいないので、普通にホールで問題が起きたのかと思っている。

{いえ。ホールでは、なにも問題は起こっていません。むしろ、問題が起きているのはキッチンの方なんです}

「キッチン?」

 七橋來未は、ホールスタッフだ。

 だから、そんな彼女が、何故? キッチンのことで俺に電話してくるのか?

 樹は、受話器に耳を当てながら首を傾げる。

{あぁ! 店長すみません! 少し言葉足らずでしたね?}

 電話越しから聴こえてきた店長の「キッチン?」の言葉に、來未は、なにかかを察して「すみません」と謝ってきた。

「いやぁ?  こっちこそ、そんなつもりで言ったわけではない。ただ……」

 どうして、ホールスタッフのお前がキッチンのことで電話してくるのか、樹は、それを來未に訊きたいのに、何故か聞くことができない。

{いえ? 私の言い方が悪かったので。そんなことより、店長、隣の休憩室に兼城くんと矢崎君が居ませんか? もしいるなら、今すぐキッチンに帰ってくるくるよう店長から言って貰えませんか? 藤井君をホールスタッフとして今日一日レンタルしたいので}

「えっ?」

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