第27話

「……なにやって……んだ! 俺は」

 來未が部屋から出て行ったあと、樹は誰にも聴こえない様に机に顔を押し付け叫んだ。

「職場で、それも一緒に居た宇野を追い出してまで俺は……」

 七橋に一体なにを聞いているんだ!

 俺はバカか? 

 確かに、七橋は2週間前、4年間交際していた婚約者と別れた……いやぁ? 一方的に奴に捨てられた。

 けど、あいつは、痛み、そして奴への想い(愛情)を今も引きずっている。

 見た目的には、いつものあいつと全く変わらない。

 だか、時々ふとしたきっかけで奴への想い(愛情)が込み上がってくるらしく、時々休憩室からあいつの涙声が聴こえてくる。

 でも、俺は、そんなあいつの涙声を聞くたびに、自分の中のあいつへの感情を押さえられなくなる。

『その想い(愛情)を奴じゃあなくて、自分に向けて欲しい』

 勿論、そんなの無理だと解っている。

 今のあいつの中には、まだ奴が生きている。

 その想い(愛情)が消えない限り、七橋は、自分の方を振り向いてはくれない。

 それどころか、あいつに想いを伝えることは出来ない。

「あぁなのに……俺は、馬鹿だ」

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