おせっかいと恋バナ

第24話

12月24日 午前8時 カフェ喫茶[rose] 女子更衣室

「おはようございます!」

 更衣室に入ってきた來未と同じホール担当の宇野真理華(22)は、先に制服に着替えていた來未を見つけると、挨拶をしながら近づいてきた。

 女子は、今日勤務のホール担当である來未と真理華を含め5人。

 しかし、ホール担当とキッチン担当は、そもそも出勤時間が違う為、更衣室で一緒になることが殆どない。

「おおおおおおおはよう真理華ちゃん!」

 あまりにも、ご機嫌する真理華に、來未は、驚く。

「おはようございます先輩! 今日は、待ちに待ったクリスマスイベント本番ですね?」

「そそそそそうだね? あぁそうだ! 真理華ちゃん? 最近、藍里君と会えてる?」

「藍里とですか?」

 制服に着替える為に、着てきた服(赤いニットワンピース)のホックを取り、ワンピースを脱いでいた真理華がそのまま來未の方を向く。

「うん。ほら? この前、真理華ちゃんが今、藍里君がと夜勤だから、デートどころか、電話もできないって言ってたから?」

 宇野真理華は、幼馴染で工場勤務(食品)の浅井藍里と大学時代から交際している。

「あぁ! 私、そんなこと言ってましたね? あぁ! でも、それもう解決しました」

 いつの間にか、ワンピースから制服に着替えを終えていた真理華が、來未に

自分の左手……いやぁ? 薬指に光り光り輝く婚約指輪を。

「!」

 一方の來未も、当然の真理華の行為に驚きながらも、彼女の薬指に光る指輪を発見すると……

「……おおおおおめでとう!」

 とそのまま真理華に抱きついた。

「おめでとう真理華ちゃん! 本当におめでとう!」

「ありがとうございます。七橋先輩のお陰です」

 抱きしめられた真理華は、來未に感謝のことを告げる。

「私はなにもしてないよ! 真理華ちゃんが頑張っただけだよ! 本当におめでとう!」

「ありがとうございます。じゃあ次は、七橋先輩の番ですね?」

「えっ? なにが」

 真理華からの予想もしていなかった言葉に、來未は思わず「えっ?」と言葉を漏らす。

「先輩? こんなこと先輩に言いたくないですけど? それ本気(まじ)で言ってます?」

 さっきまでの幸せの空気が一転し、重い空気が流れる。

「……えっと。はい、ごめんなさい」

「はぁ……先輩、今日はクリスマスイブですよ?」

 そう今日は、クリスマスイブ。

 自分に対して頭を下げている來未に、真理華は、あえて今日はクリスマスイブだと大きく念を押した。

 なのに……

「あぁそうか? 今日はクリスマスイブか? 今の自分には全く関係ないイベントだったから全然気にしてなかった。じゃあ、今日は、いつも以上に、お客様への接客頑張れないと」

 そう! 今日は、恋人たちの聖なるクリスマス。

 好きな人、過ごす特別な記念日。

 今の私には、全く関係ない普通の日だけど。

 なので、今日、明日、勤務だった栞とシフトを交換した。

 栞とは、あの(12月10日)の出来事をきっかけに、友情関係がこのまま崩れてしまうのかと思ったが、匠さんが栞にプロポーズをした事で一気に和解に転じた。

 それどころか、プロポーズした今回のこと何も知らない匠さんに、

『なんで來未が悲しいんでいる、それもこのタイミングで、私に結婚してくださいってプロポーズする訳。匠さん! あんたバカなの! わたしだけ 幸せになれる訳ないじゃあん!』

 と怒鳴り切れしたらしい。 

 まぁ? そんなこともあって、栞とはこれまで以上になんでも言い合える仲になった。

 そして、今は、二人と同じマンションに部屋(3階)を借り、互いの部屋を行き来している。

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